日本のものづくりは世界で評価されており、自動車業界でも日本車は圧倒的に信頼を得られています。
高品質な自動車生産大国の日本ですが、それ以外にも整備の面でも世界トップレベルと言われており、日本の整備士のレベルは世界でも上位にあります。
日本人は製品を大切にする文化がある
日本車の多くは車に名前を付けるのが慣例となっており、シルビアやクラウンなど車種毎にこうした愛称が付けられていますが、これは車に愛着を持ってもらいやすいという傾向があるからです。
反対に欧米各国の自動車メーカーはモデル番号を付けるだけで、あくまで機械としての記号しか付けることはありません。
外国では自動車はあくまで機械であり、それ以上でもそれ以下でもないと考える人が多いのです。
日本人は車を相棒や友人として使い、愛着を持って接する事が多いので非常に物を大切にする文化を持っていると言って良いでしょう。
日本人気質が整備士のレベルを劇的に上げた
日本人は物を大切に愛着を持って接すると話しましたが、それが直接整備士のレベルを上げていると言えます。
愛着を持っている顧客の自動車を整備士は大切に扱うというのは当然の事と考え、丁寧に整備をしています。
大切な車を単に動くようにするだけではなく、将来的な不具合に備えてメンテナンスをしっかりする事は常識となっていますが、実はこういう考え方をするのは日本人特有と言えます。
ユーザーの要望が整備士のレベルの底上げをしているのです。
タイにはメンテナンスという言葉が無い
東南アジアのタイでは急速な経済発展人伴い、これまでのような二輪スクーターから乗用車に乗り換える人が増え、多くの人が自動車を所有しています。
首都バンコクでは自動車が急増したために慢性的な渋滞になっている事を見ても、その驚異的な増え方を伺えます。
これだけ自動車の数が増えても、全く追いついていないのが所有している人の意識であったり、自動車整備士のレベルでもあります。
タイの道路を走っていると頻繁に見るのが、路肩でボンネットを上げている故障車で、高速道路でも幹線道路でもよく見る光景です。
大抵、オイル交換や冷却水のトラブルでの故障ですが、日本ではあまり見ることのないこうした故障の原因はメンテナンスを全くしていない、もしくは必要性を理解していない人が多いからです。
この原因として、タイにはメンテナンスというタイ語自体が無いのですから仕方のないことかもしれませんが。
タイの整備士と日本の整備士の違い
タイはディーラーの整備工場くらいしかまともな工具を使っている修理店はありません。
精度の悪い工具を使うのですから、頻繁にボルトを舐めてしまったりし、それが普通ですので顧客も文句を言うことはありません。
エンジンのヘッドのボルトを締める場合、日本の整備士はトルクレンチを使って、サービスマニュアルにある通りの締付けトルクで整備しますが、タイの整備士はトルクレンチを使うこともサービスマニュアルを使うこともなく、適当に締めるだけです。
タイの整備士が最もよく使う工具は「金槌」で、とにかく叩いて外したりしますので、打撃痕が多く付いてしまいます。
日本では信じられない整備がタイでは日常的に行われているのですが、日本でこの様な整備士がいたらすぐにその店から顧客が離れていくでしょう。
日本では整備士免許は国家資格ですが、タイにはそういう認定試験はなく、誰でも「プロショップ」を名乗って整備工場を開きます。
この様な自動車整備の現状があるため、顧客も「自動車は壊れたら直す」という意識しか無く、頻繁に路肩に故障車が止まっている現状があるのです。
日本で自動車に乗る幸運
日本は車検制度がしっかりあり、整備士のレベルが他国に比べて非常に高いため、自動車に詳しくなくても問題なく運転することが出来ます。
メーカーのリコール制度が受けられるのは当然と考えられるかもしれませんが、東南アジア諸国では対象外で、整備士のレベル不足が要因のひとつです。
しっかりとした整備を受けられ、知識がしっかりしたレベルの整備士がいる日本にいるのはとてもラッキーなことと言って良いでしょう。
それでもいつかは訪れる廃車という運命
やはりいつかは訪れる廃車という運命。以前はタイをはじめ日本ではもう需要の無くなった中古車が海外にでていましたが、最近は現地生産や規制などの影響で、いくつかの国では車としての輸出が激減しています。ただ、廃車から外したパーツという形で、引き続き需要のある国に輸出されていき、またリユースされている車種もあります。