数年間停められたままの「放置車両」。邪魔で危険なので、撤去したいと感じる方も多いでしょう。しかし、誰の車か分からないとなると、そう簡単に放置車両は撤去できません。そこで今回は、放置車両の撤去方法や費用について解説します。放置車両に困っている方は参考にしてください。
放置車両はどうやって撤去する?
いつからあるのか分からない、放置車両って邪魔だし危ないし、本当に困りますよね。また駐車場などに放置車両がある場合、駐車場オーナーからすると、1台分の契約できないため車両の放置は死活問題です。ここでは、放置車両を発見したらどうすればよいか、順を追って説明します。邪魔な放置車両を撤去したいと考えている方は、参考にしてください。
詳細な記録をとっておこう
放置車両を発見したら、まずは記録をとりましょう。車両が置かれている場所やナンバープレート、車の状態が分かる写真などを記録してください。ナンバープレートから、放置車両の所有者が特定できる可能性があります。
また記録の際は、できるだけ詳細に記載しましょう。車の置かれている場所であれば、見取り図や地図を書き、迅速に場所が特定できるようにします。
また記録した日付は必ず記載しておいてください。日付がわかることで後から見たときに、どのくらいの期間、放置されていたのかわかります。
警察を頼ろう
放置車両の記録をとったら、次に警察へ連絡してください。実は放置車両というのは、たとえその土地の所有者であっても、簡単に処分することはできません。車の所有者に断りなく処分してしまうと、後から損害賠償を請求されるといったトラブルに繋がります。
放置車両は然るべき手順を踏んで、処分する必要があるのです。
もちろん警察は「民事不介入」であるため、放置車両を警察側が撤去してくれるわけではありません。しかし、放置車両はイタズラや放火のターゲットとなりやすいことや、盗難車であった場合など犯罪に関わっている可能性もあります。
早期に警察へ連絡しておくことで、犯罪にかかわった車ではないかを調べてくれたり、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
またあくまでも公式ではないものの、放置車両の処分について何らかのアドバイスはもらえるかもしれません。
放置車両の所有者を探そう
放置車両を撤去するためには、まず車の所有者を探さなくてはなりません。犯罪などに関わっていない以上、警察が所有者を探してくれることはないので、自身で手続きをおこなう必要があります。放置車両の所有者を探す際、軽自動車と普通自動車でその方法が異なります。それぞれのケースについて、以下で解説するので、よく確認しておきましょう。
軽自動車のケース
軽自動車は「検査記録事項等証明書」というものを取得します。これは「軽自動車検査協会」へ行くことで取得できる証明書です。
「検査記録事項等証明書」には、車の所有者の名前や住所が記載されています。この証明書を開示してもらうには、放置車両と見なされる証拠を提示する必要があります。具体的には前述したような記録が証拠となります。放置車両の写真やナンバープレート、放置箇所の地図などを用意しておきましょう。
それに合わせて、開示請求をするあなた自身の身分証明書を持参することで、必要と認められれば「検査記録事項等証明書」を取得できます。
普通自動車のケース
放置車両が普通自動車の場合、軽自動車とは違って、運輸支局にて「登録事項等証明書」というものが取得できます。「登録事項等証明書」には、車両所有者の住所や名前が記載されています。同証明書を取得する際にも、以下のような書類が必要となります。
- 開示請求する人の身分証明書
- 手数料
- ナンバープレートの番号
- 車台番号
車台番号は、人でいうところのマイナンバーのようなものです。ナンバープレートは売却などによって番号が変わりますが、車台番号は変わりません。
たいていの場合、車台番号はボンネットを開けたエンジンルームの奥などの所定の場所に打刻してあるか、エンジンルーム内もしくはセンターピラーのコーションプレートに記載されています。車種によって、記載されている場所が異なるケースもあるため、見当たらないときは「〇〇(車種)_車台番号_確認」で検索してみてください。
詳しくは車台番号の調べ方をご参照ください。
ここで問題になるのがカギがかかっていた場合ですが、軽自動車の場合と同様、放置車両の現況、期間、画像などにより相応の事由があれば開示請求できますので、運輸支局に相談しましょう。
所有者が分かったら?
所有者が判明したら、連絡を取ることになりますが、登録事項等証明書などには最後に車検を受けた当時の記録しかなく、当然電話番号もありません。
郵送など書面で通知するしかないのですが、内容が第三者でも証明されないと後から出した出さなかった、書いた、書いていなかったというトラブルになりかねません。
そのようなときは、日本郵便のサービス「電子内容証明」であれば、第三者にて送付先および内容を確認された証明になるので大変有効です。
もし所有者欄がディーラーやクレジット会社であればラッキーです。すぐに所有者の責任にて撤去してもらいましょう。
所有者が不明、または撤去してもらえない場合は?
所有者を探そうとしても、当然見つからないケースもあります。また所有者に撤去をお願いしても、応じてもらえないときはどうすればよいのでしょうか。
相談関係機関に相談してみる
都道府県県民相談室や市民相談などの自治体のほか、法律扶助協会や弁護士会などにその対応について相談してみましょう。
具体的には、自動車の所有権を取得し放置車両を処分するという方法になります。
所有権を取得する
放置車両の所有者がわからない、もしくは所有者に撤去するよう要請しても応じない場合、完全な形で車両を処分するには、まず所有権を取得するしかありません。
駐車車両に対する妨害排除の請求を簡易裁判所へ提訴します。裁判所は公示送達によって所有者に通知しますが、連絡がなければ欠席裁判により損害賠償を認める判決が出ます。
所有者が訴訟にも応じない場合は、欠席裁判となり勝訴となるでしょう。結果、債務名義を得て、競売にかけることができます。
やっと自力で撤去することができる
車を競売にかけ、自身で落札することで、車の所有権は取得できます。また放置車両の状態から、車そのものに価値がないと裁判所が判断すれば、競売にかける必要はありません。その場合、裁判所が強制執行という形で、車の処分を新たな所有者となった原告に、一任することになります。
トラブルのことを考えると、ここまで行い、やっと廃車業者に引き取ってもらう、つまり自力で撤去することができます。放置されているとはいえ車は、元々他者の所有物であるため、細かな手続きが必要となってしまうのです。
放置車両を撤去する場合の費用は?
所有権を取得しても、放置車両を撤去する際には、以下のように相応の費用が必要となる可能性もあります。
撤去費用など負担が掛かるケース
- 車内に大量のごみ
- 車内に家庭用機器がある(テレビや冷蔵庫など)
- 敷地が狭く引取作業のスペースがない
- 道が狭く、トラックが入れない
- タイヤの空気がない
- 鍵がない
- リサイクル料金が未預託
- 部品取りされてしまっている
このような場合は、不幸にも買受人の責任で処分費用を負担しないといけません。
撤去費用がかからないケースは?
鍵がない、タイヤがパンクしているなどの状態にある放置車両でも、費用をかけずに撤去する方法があります。それは「廃車買取専門業者」へ依頼することです。
不動の車を扱うことに慣れているうえに、専用のクレーン車を所有しているため、費用がかからずに放置車両を撤去できます。面倒な手続きをしたうえに、決して安くない費用を支払って撤去するのは嫌だという方におすすめです。
しかし、当然このような場合でも物理的な作業スペースがない場合は、無料処分対応はしてもらえないかもしれません。
買取してもらえるケースは?
車両の価値によっては買取をしてもらえる場合ももちろんあります。
車の価値があるものはもちろんですが廃車買取の専門業者へ依頼することで、古い車でも車種により買取してもらえる可能性があります。
理由としては、廃車業者であれば、自社で自動車リサイクル工場を持ち、車体のエンジンなどの中古部品としての価値、マフラーなどの触媒の価値など、それぞれに査定し価値をつけることができるからです。
解体作業にかかる費用から、それらパーツの買取費用を引くことで、結果的に費用をかけず解体できるということです。
確認標章が貼られた放置車両は?
放置車両のなかには、すでに「確認標章」というステッカーが、フロントに貼られている車も珍しくありません。では確認標章が貼られた車両は、どのように対処すべきでしょうか?
一見すると、すでに放置車両だと認められているのだから、このまま放っておいても、いずれは撤去されるだろうと思いがちです。ここでは確認標章が貼られた放置車両がどうなるのか、解説していきます。
確認標章とは何か
確認標章とは何かご存知でしょうか?「確認標章」とは、駐車違反をした際、フロントガラスに貼られる黄色いステッカーのことです。警察官をはじめ、選任を受けた駐車監視員が定期的に地域を巡回し、注意車違反の車に貼り付けていきます。
確認標章が貼られた車の運転手は、違反の度合いによって罰則を受けることとなるでしょう。
確認標章が貼られた放置車両はどうする?
確認標章が貼られた放置車両は、「放置されていることが、警察などから認識されているのだから、一定期間が経てば撤去してもらえるのでは?」と考えるかもしれませんが、警察は放置車両を強制的に撤去することはできません。
たとえ車が私有地にあったとしても、民事不介入の原則から、警察が放置車両を撤去してくれることはありません。つまり確認標章が貼られた車であっても、ここまでに解説したような流れで撤去しなければならないということです。
放置車両の撤去は慎重に行いましょう
放置車両の撤去は、法律面から見ても、安全性の観点から見ても、安易に勝手におこなうべきではありません。 まずは然るべき手続きをおこなったのち、業者に任せて撤去してください。ここでは放置車両の撤去を業者に任せるべき理由や、業者選びの注意点について解説します。
業者に依頼することで、安全に撤去できる
まず、法的執行を行う場合は、個人ではやはりなかなか難しいので法律相談など弁護士団体などの無料相談を利用してみましょう。
それらが終えた後、廃車買取業者などで処分しましょう。
業者を選ぶときの注意点
業者のなかには、「法的手続きも含めて全部こちらでやっておきますよ」といいながら法的手続きをせず解体だけしてしまうというところもあるかもしれません。
しかし、このようなところに依頼してしまうと、後々トラブルになった際に、依頼者が責任をとらなければならないといった事態になりかねません。
このような悪徳業者に依頼してしまわないためには、しっかりと依頼する内容などを記録し、業者を選ぶのがおすすめです。
過去に十分な経験があるか、古物商や解体業の許可証をもっている許認可工場かなどを精査し、信頼性の高い業者を選びましょう。
まとめ
長期間放置されている車は、トラブルの元にもあり、非常に厄介でしょう。だからといって勝手に処分してしまうと、損害賠償を請求されるなどのトラブルにも繋がってしまいます。
繰り返しになりますが、たとえ面倒でも、放置車両は然るべき手続きを踏んで、撤去されることをお勧めします。