新車を購入する際に用いる手段のひとつである「残価クレジット(残クレ)」について、そのリスクやデメリットをご存知でしょうか?車はクレジット決済やローンを組んで購入する方も多いはずです。しかし同じ金額の車でも、金利によって完済時の返済金額が異なります。そこで今回は残クレについて、デメリットを中心にリスクや仕組み、向いている人、そうでない人の特徴を解説します。
そもそも残クレって何?
残価設定クレジットは、車を購入した経験のある方にとって、聞き覚えのある決済方法でしょう。しかし、初めて車を購入する方には、少し馴染みのないワードかもしれません。まず初めに残価設定クレジット、通称残クレとはどのような決済方法であるのか説明していきます。決済方法や仕組み、金利、利用者増加の理由などを踏まえて、残クレの利用を検討してみてください。
残クレとは、新車購入時の手段
残価というのは、購入した新車を数年後に下取りへ出す場合の買取保証額のことを指します。
残クレとは、新車を購入するときに用いられる決済方法のひとつで、新車の購入金額からこの残価を差し引いた金額をローンとして返済する仕組みのことです。結果として、もともとの購入金額よりも30〜50%引きで新車を保有することができます。
ローンの支払期限が終了したあとは、差し引いた分の買取保証額(残価)を支払って買い取り乗り続ける、ディーラーに車を返却して終了、新車に乗り換えるといった方法があります。車を乗り換えてもよし、乗り続けてもよしと選択肢が多くあるうえに、お得に新車を購入できることが魅力です。
残クレの金利は?
カードローンなどと同様に、残クレを用いて決済する場合でも、金利が発生します。この金利は、新車を購入する時期や購入先、車種、ローンの期間などによって変動します。またこのときの金利は、残価を差し引く前の車両価格に沿って決められることも把握しておきましょう。この点は商談時に説明を聞くまではご存じない方が多いと思います。
残クレを用いた場合、一般的な金利は3〜5%といわれています。ローンを組んで新車を購入する場合、残クレ以外の手段としてはディーラーローンまたはマイカーローンを用いることが一般的です。金利の点で、この2つと残クレを比較してみます。
ディーラーローンの金利は3〜10%であるため、残クレの方が金利を安く抑えることができます。一方で銀行によるマイカーローンの金利は、1〜4%程度です。その分、審査や手続きが煩雑といったことがあります。マイカーローンよりも残クレを用いたほうが、金利は高くなるといえるでしょう。
残クレ利用者が増えてるって本当?
銀行のマイカーローンよりも金利が高い傾向にある残クレですが、以下のような理由から、利用者は増加傾向にあります。
キャンペーン時に契約をすれば金利を低く抑えられる、契約時に残価が設定されているので、車を乗り換えるときに「どのくらいの金額で売れるのかわからない」「下取りを安くされないように注意しなければならない」という不安がない、ローンの返済期間が終了したとき、スムーズに次の新車へ乗り換えることができるなどといったことが残クレ利用者が増加している理由だと思います。
車の売却は、より高額で買い取ってもらえるよう交渉、タイミングを考えなければなりません。しかし、残クレでは買取補償金額が確定しているため、このような手間もありません。
また、万が一、経済動向などにより市場価格が下落しても残クレでは買取補償金額が確定しているため、安心です。
残クレを使う5つのデメリット
ここまでの内容から残クレは、お得で人気の車種を購入するにも適した仕組みだという印象を持つ方も多いでしょう。しかし車という大きな買い物をする場合、注目すべきはメリットよりもデメリットといえます。
デメリットを考慮しなければ、後になって「トータルで見るとお得じゃなかった」「そんなデメリットがあるとは知らなかった」などといった事態を招いてしまう可能性があります。そこでここでは、残クレを利用することのデメリットを5つ紹介します。
1.金利が高い
前述したように、残クレは銀行のカーローンを利用するよりも、金利が高くなってしまいます。金利については、車種や購入先によって変動します。
またローンの支払期間を終えた後も、残価について再クレジットでそのまま車を利用する場合、金利分を含めたトータルの支払金額が高くなってしまいます。
車を乗り換えることが前提であれば、残価分お得に新車を購入できますが、そうでない場合や乗り換えをまだ迷っている場合はよく考えて残クレを利用しましょう。
もちろん、支払期間が長期であればあるほど、トータルの支払額は大きくなります。この点は残クレに関わらず、多くのクレジット決済も同様です。金利に加えて、支払い総額も注意すべきポイントといえます。
2.追加料金が発生する可能性もあります
残クレには、追加料金が発生する可能性もあることを理解しておかなければなりません。
そもそも車両価格から差し引かれる残価は、故障やむごい傷がないことを前提に設定されます。当然ながら、事故や注意などで車体に傷がついてしまった場合、買取価格は下がります。そのため、事故で修復歴車になってしまった、ディーラーの評価基準以上の傷、事前に設定した以上の走行距離である場合、買取価格の低下に応じた追加料金を請求されるということです。
また、事故によって、廃車となってしまった場合でも当然ローンおよび残価分の支払い義務が残ります。事故を起こさないよう安全運転をすることは基本ですが、もらい事故という場合もあります。そうなると残クレを用いて購入したメリットはすべて失われます。
車の残価設定ローン、「もらい事故」で泣き寝入り(西日本新聞meより)
3.車種によっては残価が安い可能性も
人気の車種によっては、3〜5年では車両価値が下がらないケースもあります。経年劣化などを踏まえて算出される残価よりも、実際は中古車市場での販売価格の方が高額になっていたというケースも考えられるでしょう。もちろんこの場合、結果としては他の決済方法で購入し、売却した方が高価格で売れてお得だったということになります。
または別のディーラーで新車を買いなおす際などの下取り代が残価分以上ということもあり得ます。スポーツカー、SUVなど市場価格が下がりに行く車種を残クレで保有されている場合、買い取って買取店で売却する、もしくは次の車をかう購入店で下取りをしてもらうということも検討すべきでしょう。
特に今はコロナの影響で新車の納車が遅れており、中古車の需要が上がっています。残クレがあっても、手放す際は、買取査定で現在価格を確認してから返却か買取か検討しましょう。
4.走行距離に制限がある
残クレを用いることのデメリットとして、走行距離に制限があることもあげられます。
車の買取価格は、走行距離に大きく左右されます。使用頻度が多く、走行距離が長い車ほど買取価格は安くなってしまいます。
具体的な制限距離について解説しましょう。日産やホンダがおこなう残クレでの決済では、月額走行距離を1,000kmまたは1,500km以内と定めています。契約時にどちらかを選び、それによって差し引かれる残価が変動する仕組みです。
日産とホンダの例を挙げましたが、この制限距離は、メーカーによって異なります。自身が購入を検討しているメーカーの制限距離は、事前にしっかりと確認しておきましょう。
という観点でみると、通勤などで毎日長距離運転する予定のある方は、月額走行距離をオーバーしてしまう可能性があるため、通常ローンで購入したほうがいいということが言えそうです。
5.所有権がなく、カスタマイズはできない
残クレによって購入した新車には、所有権がありません。購入者として登録はされますが、所有権は自動車販売店または信販会社のままであるケースが一般的です。もちろん、ローンの支払期間が終了し、残価分も完済することで、名義を変更できます。
しかし全てのローンを払い終えるまで所有権は持てないため、カスタマイズはできません。万が一、カスタマイズをしてしまった場合、車の返却時に基の状態に戻さなければならないので注意しましょう。また事故による廃車の手続きなども、所有者の同意が必要です。
自分好みにカスタムした車に乗りたいという方には、残クレは不向きな決済方法でしょう。
残クレはメーカーによって金利が異なる
残クレを利用する際、最も気になる点はやはり金利ではないでしょうか。前述したように、メーカーは金利を左右する大きな要因のひとつです。ここでは、自動車メーカーとして人気の高い10社の金利をまとめて紹介します。
自身が購入を検討しているメーカーの金利は何%ほどなのか、以下の一覧表で確認してみてください。
メーカー | 金利 |
---|---|
ホンダ | 3.5% |
マツダ | 2.99% |
スバル | 3.9% |
ニッサン | 販売店による |
三菱 | 販売店による |
トヨタ | 販売店による |
ダイハツ | 販売店による |
特別低金利を実施しているところと、そうでない店舗があります。購入を考えている店舗が、キャンペーンなどを実施しているのか事前に確認しておきましょう。
残クレを使う3つのメリット
残クレを利用することには、デメリットばかりではなくメリットもあります。ローンを組むことは、その後の数年間支払いを続けていくということ。デメリットとメリット、どちらも考慮して検討したいところです。ここでは残クレを利用するメリットとして乗り換えが容易である、残価が保証される、月額の支払い金額が安いといった3点を紹介します。
1.車の乗り換えが容易
残クレを利用することによって、新車の乗り換えが容易になります。これは車を乗り換える際、自身で見積もりを依頼したり、複数社の買取価格を比較検討したりといった手間がないためです。
残クレのローンの支払期間の平均は3〜5年で、3〜5年おきに車種を変更できるということです。定期的に違う車に乗ってみたい方や、近々ライフステージに変化がありそうな方にとっては、新車の乗り変えが容易である点は、大きなメリットとなるでしょう。もちろん残価を支払って、車を乗り続けることもできるため、選択肢を多く確保したい方にもおすすめです。
2.残価が保証される
基本的に車は、年数が経つほど価値が下がっていくものです。一般的な車種では、1回目の車検の期間である3年が経った頃から価値が下がり始めます。多くの場合、5年経つとさらにガクッと価値が下がってしまうそうです。
このことを踏まえると、契約時に買取価格が保証されている残クレは心強いといえます。あらかじめ価値が下がることを前提とした支払額のため、車の価値が上下することを気にせず、乗り換えができます。3〜5年で乗り換えを検討しているという方は、残クレでの決済が適しているでしょう
3.月額の料金が安い
毎月の出費を抑えて車を保有したい方にとって、残クレは最適な決済手段といえます。
残価を差し引いた金額を支払うため、月額の返済額が安く抑えられることも残クレのメリットです。まとまった頭金を用意しなければならないフルローンなどと異なり、購入者の経済的負担を軽減できます。
さらに3年未満で車を乗り換えた場合は、車検の費用を支払う必要もありません。乗りたい車があるけれど「貯金があまりない」「月々の支払いによる負担が心配」という方は、残クレを利用すると良いでしょう。
残クレ利用に向いてる人・向いてない人
残クレは月額料金を抑えられるなどのメリットがある反面で、トータルの支払額が増えてしまう、追加料金が発生するリスクがある、走行距離の制限があるなどのデメリットもあります。これまでに紹介したメリットとデメリットを踏まえて、ここからは残クレの利用が向いている方と向いていない方、それぞれの特徴を解説します。メリット・デメリットだけでなく、自身の経済状況や車の使用頻度などから、向き・不向きを考えて決断しましょう。
向いている人の特徴
残クレの利用が向いている方の特徴としては、以下3つが考えられます。
- 短期間で車を乗り換えたい
- 決まったメーカーの車に乗り続けようと考えている
- 車を使う期間を購入時から決めている
3〜5年など短期間で車を乗り換えたいと考える方には、残クレでお得に新車を購入する方法が向いています。
残クレは、すべての支払いが完了する前に他のメーカーへ乗り換えようとする場合、残りのローンを一括で返済しなければなりません。しかし、同じメーカーの車に乗り換える場合は、このルールがないため問題ないでしょう。
学生のときだけ、単身赴任中だけなど、車が必要な期間が決まっている方も、残クレの利用に向いています。ローン支払期間が終了すれば、そのままディーラーへ車を返却すれば良いため、手軽に車を手放せます。
向いていない人の特徴
反対に、残クレの利用が向いていない方の特徴としては、以下のような事柄が挙げられます。
- 頻繁に遠出をする
- 運転に自信がない
- 計画的な分割払いが苦手
前述したように、残クレには走行距離の制限があります。そのため、頻繁に車で遠出をするという方は、すぐに制限をオーバーしてしまう可能性があるため残クレの利用は不向きです。
また運転技術に自信がない方も、残クレの利用は避けるべきでしょう。事故を起こしたり、車体に傷をつけてしまったりすると、残クレは追加料金が課されます。大きな事故をおこしてしまった場合は、ローンの一括返済を求められてしまうこともあるため、留意してください。
毎月定額の支払いをすることが前提である残クレは、計画的な分割払いが苦手である方にもおすすめできません。ローンとはすなわち借金であるため、返済が遅れてしまうと社会的信用に傷がつく可能性があります。
残クレを利用するときの注意点
これまでの内容を踏まえて残クレの利用には、良い面と悪い面があるのだとお分かりいただけたでしょう。しかし両面を考慮したうえで、残クレの利用を決めた場合でも、いくつか注意すべきことがあります。以下では残クレを利用する際の注意点を、収支のバランス、事故の可能性、返済の遅延といった3点にわけて解説します。残クレを活用しようと考える方は、くれぐれも注意してください。
収支のバランスを考える
当たり前ですが、ローンの支払いは毎月発生するので、支払いの負担を考慮することが大切です。車のように高額な商品を購入する場合は、返済期間もそれだけ長期にわたります。数ヶ月ではなく、数年間支払いを続けることができるか、月々の収支バランスを十分に検討しましょう。
もちろん数年間、支払いを続けるうえでは、予想外の出費が発生する月も考えられます。できる限り、無理なく返済できるよう、返済額には余裕をもって契約しましょう。
事故に備える
どれだけ安全運転を心がけていたとしても、事故を起こしてしまう可能性はゼロではありません。前述したように残クレは、すべてローンを完済するまで車の所有権がもてません。廃車になってしまうような、大きな事故に巻き込まれてしまった場合は、ローンの残金を一括で返済するよう求められることもあるでしょう。
そこで残クレを利用していたとしても、車両保険には加入しておくことをおすすめします。事故によって一括返済を求められてしまった場合でも、損害による負担を軽減できます。
返済は遅延しない
残クレの利用に関する向き・不向きに関する説明でも述べましたが、ローンとは借金です。この返済が遅れてしまうと、遅延損害金が追加されるなどといった、ペナルティが課せられる可能性があります。
場合によっては、業者のブラックリストに名前が載ってしてしまう可能性もあるので、返済日には遅れないようにしましょう。確実に返済できるように、支払日の前には口座残高を確認しておくようにしてください。
残クレはデメリットに考慮して、賢く利用しよう
残クレについて、デメリットを中心にメリットや仕組み、金利、向いている人とそうでない人、注意点などを解説しました。残クレを活用する方の多くが、3年以上に渡って支払いを続けていきます。長期間かけて返済するローンだからこそ、メリットばかりでなく、デメリットや注意点についても考えておかなければなりません。新車を購入する場合は、ぜひここまでの内容を参考にしてください。