環境にやさしいことで、近年注目されている電気自動車。車両を導入する際、気になるのは維持費ですよね。ガソリン車やハイブリット(HV)車と、電気自動車の維持費を比べると、果たしてどのくらいお得になるのでしょうか。本記事では、維持費の比較はもちろんのこと、活用できる補助金や減税制度なども合わせて解説していきます。
電気自動車ってどんな車?
近年、度々耳にする電気自動車。EVといった呼ばれ方もされていますが、これは「Electric Vehicle」の略称です。漠然と電気自動車=EVと認識している方も多いですが、実は少し違います。では電気自動車とは一体どのような車両なのでしょうか?維持費について解説する前に、そもそも電気自動車とは何なのかについて解説していきます。
電気を動力にして走る車両が「電気自動車」
先ほど、EVとはElectric Vehicleの略であると説明しました。Electric Vehicleを訳すと「電気を動力にすることで動く車両」となります。つまりEVには、電気自動車のことだけでなく、電気を動力にしている車両であれば、全て含まれるということです。とはいえ、EV=電気自動車という認識が広まっているため、電気自動車という意味で「EV」と略しても、意味は通じるでしょう。
EVには「BEV」「HV」「FCV」の3種類があります。3つの大きな違いとしては「動力」と「燃料」です。それぞれについて、以下の表を参考に、比較してみてください。
燃料 | 動力 | |
---|---|---|
BEV | 電気 | 電気 |
HV | 電気または化石燃料 | 電気または化石燃料 |
FCV | 水素 | 電気 |
電気自動車は、上記3種類のうち、燃料と動力、どちらも電気のみを使った「BEV」に該当します。
代表的な車種は?
現在、多くの自動車メーカーが、電気自動車の開発を進めています。個人でも電気自動車に買い換える方も多くおり、今後も一層増えていくことでしょう。
では具体的に、電気自動車を購入するならば、どのような車種を検討すれば良いのでしょうか?電気自動車の代表車種は、以下のとおりです。
車名 | メーカー |
---|---|
リーフ | ニッサン |
アリア | ニッサン |
MX-30 EV MODEL | マツダ |
Honda e | ホンダ |
bZ4X | トヨタ |
UX300e | レクサス |
国内では、日産が電気自動車の先駆者とされていることもあり、現在も多くの車種が販売されています。また輸入車であっても、電気自動車を選択することはできます。輸入車の代表車種は以下のとおりです。
車名 | メーカー |
---|---|
iX | BMW |
Q4 e-tron | AUDI |
I-PACE | JAGUA |
EQA | Mercedes-Benz |
Taycan | porsche |
電気自動車の維持費は?
多くのメーカーから販売されている「電気自動車(EV)」ですが、導入するときに気になるのは、やはり維持費ですよね。いくら環境によいからといっても、維持費がかさむ車両を個人や企業で導入するのは躊躇ってしまいます。ガソリン車と比較して、維持費が変わらない、または高くなるのであれば、わざわざ電気自動車を導入しようとは思わないかもしれません。
そこで本章では、電気自動車の維持費について、メンテナンス費用や燃料費、税金、保険の観点から、解説を進めていきます。
定期メンテナンス費用
まずは車両のメンテナンス費用。ガソリン車であれば、エンジンだけでもオイルやフィルターなど消耗品も多く、定期的に交換費用がかかります。しかし電気自動車のモーターの場合、エンジンオイルやオイルフィルターがなく定期的な消耗品はありません。もちろん潤滑油は使用されていますが、ガソリンエンジン車などと比べると負担が低く、交換頻度は多くありません。
車検代
定期的におこなう「車検」においても、電気自動車のほうがコスパが高いといえます。代表車種のひとつである「リーフ(日産)」の例で見ると、車検の基本料金は40,000円ほどが相場なのだそうです。これに法定費用26,000円を合わせると、66,000円となります。
リーフは3ナンバーの車となります。同じく3ナンバーでガソリン車の場合、車検費用の相場は65,000〜135,000円ほどとなります。両者を比べると、電気自動車のほうが車検費用はローコストであると言えそうです。
燃料費
言うまでもありませんが、電気自動車の燃料は電気です。そして電気は、ガソリンよりもはるかに安価な燃料とされています。ごく一般的な電気契約の場合、100kmごとの電気代は約490円。年間10,000km以上を走行したとしても、49,000円です。
車種によってはもちろん、充電をするタイミングが昼か夜かによっても、金額には差が生じます。以下では、日産リーフの例で電気代をシミュレーションしていきます。
国内では、日産が電気自動車の先駆者とされていることもあり、現在も多くの車種が販売されています。また輸入車であっても、電気自動車を選択することはできます。輸入車の代表車種は以下のとおりです。
充電回数 | 電気代(昼に充電) | 電気代(夜に充電) | |
---|---|---|---|
3,000km走行 | 10回 | 18,600円 | 12,400円 |
5,000km走行 | 16.6回 | 30,876円 | 20,584円 |
8,000km走行 | 26.6回 | 49,476円 | 32,984円 |
※車両は全て、日産リーフの現行モデル『62kWh』としています
税金
自動車にかかる税金も、維持費として無視できませんよね。では電気自動車の場合、どれほどの税金が課されるのでしょうか。
周知のことではありますが、自動車税は「総排気量」によって変動します。まず自家用乗用車において総排気量が1,000cc以下であれば、29,500円ほどの自動車税で済みます。しかし総排気量が1,500cc〜2000ccで39,500円。2,000cc〜2,500ccともなると、自動車税だけでも45,000円もの費用が発生します。
では電気自動車の場合はどうでしょうか。電気自動車から出る排気量は「0」です。これはガソリンを使わないので、排気ガスが出ないためです。つまり自動車税は、最も安価な年間29,500円ということになります。
保険
自動車を保有するためには、税金だけでなく任意保険料の支払いも必要となります。電気自動車の保険料とは、いくらほどになるのでしょうか。
基本的に、自動車の任意保険は保証内容、等級によって金額が変動しますので一概には申し上げられません。ただ、車両保険をつけた場合は、車両本体が高い分、保険料も高くなります。
30代で20等級、年間走行距離5000km以下、車両保険500万円を附帯したとして39,000円~68,000円程度(※保険金額は保険会社・保障内容により異なります)になるようです。
保険会社によりエコカー割引などがあれば、そちらも受けられます。
電気自動車には補助金・減税制度がある
電気自動車を導入するにあたって得られる、大きなメリットの一つが、さまざまな減税制度や補助金が活用できることです。具体的には、地方自治体による支援やクリーンエネルギー自動車補助金、各種減税制度が適用されます。
それぞれの支援・補助金・制度について、以下で紹介していくので、電気自動車の導入を検討している人は参考にしてください。
自治体による支援
一部の地方自治体では、電気自動車の普及を進めることを目的に、独自の補助金や制度を導入しています。制度の有無や内容は、自治体によってさまざまですあるため、一例を紹介します。
東京都足立区が、独自におこなっている補助金制度では、電気自動車を購入することで、一律10万円の補助金を受け取ることができます(※申請期間 令和4年4月11日から令和5年2月28日)。また東京都と愛知県では、電気自動車を導入することで、購入から5年間は、自動車税が全額免除されます(※令和4年4月13日現在)。
東京都 ZEV導入促進税制
愛知県 自動車税種別割の課税免除について
CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金
クリーンエネルギー自動車補助金は、最大金額が最も高額な補助金です。電気自動車の車種ごとに金額が定められており、最大85万円の補助金を受け取ることができます。
補助金を受け取るためには、まず「センター補助金交付申請書」を提出します。その後審査を受けることで補助金が交付されます。このとき対象車両に対して、3〜4年間の保有事務が課せられます。
減税制度
電気自動車を導入することで、適用される減税制度は以下3つです。
- 自動車税種別割
- 自動車重量税
- 環境性能割
自動車税の場合は、2023年3月までに、新車で電気自動車を購入した人は、購入の翌年度にかかる税率が約75%軽減されます。
自動車重量税における減税制度は、電気自動車を新車で購入した場合、購入時と次回の車検が全額免除されます。
最後の環境性能割は、電気自動車の場合は「非課税」となります。
ガソリン車・HVとの比較
ここまでの内容から電気自動車の維持費についてはお分かりいただけたでしょう。しかし、電気自動車だけの維持費がわかっていても、果たしてそれがガソリン車やハイブリット車(HV)などと比べて、得なのか否かは判断できません。
そこで本章では、ガソリン車と電気自動車、ハイブリット車と電気自動車、コスト面におけるそれぞれの違いについて解説していきます。
ガソリン車と電気自動車の比較
まずは最も多くの人が保有している「ガソリン車」と電気自動車のコストを、比較していきます。しかし、ひと言でコストといってもその内訳は複数あります。
本章で解説するのは、走行コストと年間維持費です。ガソリン車と電気自動車、それぞれの違いを比較したうえで、最終的にどちらのコスパが高いのか、判断してみてください。
走行コストの違い
まずは電気自動車とガソリン車、走行にどのくらいコストがかかるのか両者を比べてみましょう。ここでは最もシンプルに、10,000km走るのに必要な燃料からコストを比べていきます。
電気自動車の場合、10,000km走るためには1,538kWhの電気が必要となります。1kWhが25円であるため、10,000km走るための電気代は「38,450円」であるとわかります。
一方でガソリン車の走行コストはどうでしょうか。ガソリン車が10,000km走るには、約666L(リッター15kmとして)のガソリンが必要となります。ガソリン1Lに対してかかる費用は、約170円です。このことから、ガソリン車で10,000km走るために必要な走行コストは「113,220円」となります。
両者を比較すると、電気自動車の走行コストは「ガソリン車の半分以下」であると結論づけることができます。
年間維持費の違い
年間維持費についても、電気自動車とガソリン車の間には大きな差があります。条件を揃えるため、どちらも購入から3年間の維持費を比較していきます。
まずは電気自動車の維持費見込み(内訳含む)を3年分見ていきましょう。
1年目の金額 | 2年目の金額 | 3年目の金額 ※車検 |
|
---|---|---|---|
自動車税 | 6,500円 ※75%軽減済 |
25,000円 | 25,000円 |
自動車重量税 | 0円 | 0円 | 0円 ※制度利用 |
自賠責保険 | 0円 | 0円 | 20,010円 |
登録印紙代 | 0円 | 0円 | 1,600円 |
任意保険 | 70,000円 | 57,000円 | 50,000円 |
車検基本料 | 0円 | 0円 | 約40,600円 |
法定定期点検 | 20,000円 | 20,000円 | 0円 |
走行コスト ※1万キロ |
38,450円 | 38,450円 | 38,450円 |
総額 | 134,950円 | 140,450円 | 175,060円 |
次にガソリン車(1800ccクラス)における、3年分の維持費見込みです。
1年目の金額 | 2年目の金額 | 3年目の金額 ※車検 |
|
---|---|---|---|
自動車税 | 36,000円 | 36,000円 | 36,000円 |
自動車重量税 | 0円 | 0円 | 24,600円 |
自賠責保険 | 0円 | 0円 | 20,010円 |
登録印紙代 | 0円 | 0円 | 1,600円 |
任意保険 | 60,000円 | 47,000円 | 4,000円 |
車検基本料 | 0円 | 0円 | 約40,600円 |
法定定期点検 | 20,000円 | 20,000円 | 0円 |
オイル交換費用 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
走行コスト ※1万キロ |
113,220円円 | 113,220円円 | 113,220円円 |
総額 | 239,220円 | 226,220円 | 285,520円 |
トータルコストは電気自動車の方が安い
走行コストや年間維持費を比較すると、電気自動車の方がガソリン車よりも大幅にコストを削減できることがわかります。
電気自動車の年間コストが、13〜17万円であることに対して、ガソリン車の場合は22〜28万円となります。両者には9〜12万円ほどの差が生じています。この結果から電気自動車の方が、ガソリン車よりも圧倒的に、維持費が安いと言えるでしょう。
ハイブリット車(HV)との比較
ガソリン車よりも電気自動車の方が、走行コストや年間持費が安いことはお分かりいただけたでしょう。ではハイブリット車と比較すると、どちらのコスパが高いのでしょうか?
ハイブリット車の燃費は、リッター25kmとして10,000km走行するのに400リットル必要です。ガソリン車と同様の条件で10,000kmあたり68,000円かかるということになります。やはり3万8,450円の電気自動車の方が、維持費が安いと言えるでしょう。
電気自動車が抱える課題とは?
走行コストや維持費、さまざまな支援制度(補助金)などの観点から見ると、すぐにでも電気自動車に変えた方が、お得に感じるかもしれません。しかし実際は、公道で見かけるほとんどの車がガソリン車です。それは、電気自動車が誕生してから、まだ歴史が浅いという単純な理由の他にも、以下のような課題があるためです。
- 自宅に充電設備が必要
- 一回の充電で走行できる距離に限りがある
- メインバッテリーの交換に70万円程度(再生バッテリーで40万円程度かかる
最後の点について補足をすると、バッテリー自体の寿命は10年ほどです。また、別途工賃も発生します。
電気自動車を導入する初期費用
電気自動車は、車両を購入すればすぐに活用できるものではありません。車両以外にも、自宅に充電設備を設置する費用がかかります。では具体的に、車両と充電設備は、それぞれいくらほどなのでしょうか?本章では、電気自動車を導入する初期費用として、既出の2つを解説します。
車両にかかる費用
電気自動車本体を新車で購入するためにかかる費用は、国産メーカーのもので300〜600万円、外車の場合は700万円前後が相場とされています。さらにポルシェをはじめとした、高級ブランドの車両であれば、1,000万円以上するものもあるのだそうです。また国産メーカーであっても、日産のアリアは、700万円前後となります。
充電器設置にかかる費用
電気自動車は、基本的に自宅で充電をします。そのため自宅に、電気自動車専用の充電設備を取り付けなければなりません。この工事費も当然ながら、初期費用に含まれます。充電設備の設置費用は、工事費込みで10万円前後が相場となっています。また、車の充電を家でも使用できるV2H機器の場合は80万円程度します。しかし車両の販売会社によっては、設置費用を一部負担するところもあるようなので、探してみてください。
維持費を比べ、電気自動車の導入を検討しよう
電気自動車の維持費について、解説しました。燃料やメンテナンス、車検、部品交換などを合わせた、トータルの維持費を比べてみると、電気自動車のほうが、ガソリン車よりも6〜8万円ほど安いことが分かります。また国や自治体が運営する制度も、経済的負担を軽減してくれます。電気自動車を検討している方は、維持費も比較材料として考えてみてください。