アルコールが抜けない状態で車を運転する行為は危険であり、厳罰に処されます。そうはいってもときにはチューハイなどのお酒を飲みたいものです。お酒を飲んでからアルコールが抜けて運転できるまでの目安時間は計算で求めることができますので解説しましょう。
体重とアルコール摂取量から目安時間が計算可能
アルコールが抜けるまでの目安時間は体重とアルコール摂取量から計算可能です。そのやり方と注意点を解説します。
純アルコール量 ÷ (体重 x 0.1)で求められる目安時間
アルコールが体から抜けるまでの目安時間は以下の計算式で求められます。
純アルコール量(g) ÷ (体重(kg) x 0.1)
アルコールが抜けるまでの時間が体重に依存するのは、アルコールは体内の水分がある場所に分布するためです。より体重が多い人ほど水分量が多く、同じアルコール量を飲んでも体内の濃度が薄くなります。
「1番寝れば大丈夫」はNG
この計算式からチューハイを飲んでから抜けるまでの時間を計算してみましょう。たとえば体重70kgの人がアルコール度数が7%のチューハイを350ml飲んだ場合、上の式にあてはめると、
350 x 0.07 ÷ (70 x 0.1)= 24.5 ÷ 7 = 3.5時間
となります(350mlのチューハイは350gと仮定)。
チューハイを2本飲めば7時間、3本飲めば10.5時間かかることになるでしょう。
アルコールは一晩寝れば抜けると考えている人もいますが、この結果からは必ずしもそうとはいえないことがわかります。
年齢やアルコールの分解能力によって大きく変化するので注意
上の式はあくまでアルコールが抜けるまでの目安時間を計算するためのものであり、実際には個人差が大きいです。
たとえば1時間で分解できるアルコールの平均量は男性で9g、女性で6.5gと大きく異なります。
計算式で求めた時間経てば必ずアルコールが抜けるわけではないので注意してください。
業務用の運転ではアルコールチェックが義務化
業務用の運転では乗車前のアルコールチェックが2022年から義務化されます。その背景や必要とされること、個人での対策などについて解説しましょう。
悲惨な死亡事故がきっかけ
これまでも運送業や旅客運送業などに使われる車を運転する場合のみで求められていたアルコールチェックですが、2022年からは社用車や営業車を含むすべての業務用の車に義務付けられます。
このきっかけとなったのは2021年6月に千葉県八街市で起きた、飲酒運転のトラックによる小学生の死傷事故です。当時トラックはアルコールチェックの対象とされておらず、この運転手もチェックを受けないまま運転し事故を起こしました。
このような悲惨な事故を二度と起こさないため、アルコールチェックがすべての業務用車で義務化されることになったのです。
アルコール検知器の使用と記録が必要に
この義務化は2段階でおこなわれます。
まず2022年4月からは、運転前と運転後の運転手が飲酒状態でないかを目視などで確認し、確認結果を記録し残すことが必要です。
そして2022年10月からはアルコール検知器を使った検査が求められ、事業所にアルコール検知器を設置するだけでなく、業務の場合は持ち運び可能なアルコール検知器の携行が必要になります。
個人向けのアルコールチェッカーも販売中
利用が義務付けられているわけではありませんが、個人でもアルコールチェッカーを購入することは可能です。
たとえばタニタが個人向けのアルコール検知器を販売しています。
このような機器を利用することでアルコールが抜けたかどうかを確実に把握することができるでしょう。
アルコールが抜けない状態で車を運転した場合、重い罰則が課せられます。
アルコールが抜けない状態で車を運転した場合、重い罰則が課せられます。
事故を起こさなくても多額の罰金
飲酒運転は事故を起こした場合だけでなく、アルコールが抜けていない状態で車を運転しただけで罰則が課せられます。
たとえば呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上の場合は酒気帯び運転として3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
また、違反点数も0.25mg未満の場合は13点で90日の免許停止、0.25mg以上であれば違反点数25点で2年の免許取り消しとなります。
さらに”ろれつ”が回らなかったりまっすぐ歩けなかったりするなどの状態であれば酒酔い運転として5年以下の懲役または100万円以下の罰金となり、違反点数も35点で3年の免許取り消しです。
事故を起こせば1年以上の有期懲役
事故を起こせば罰則はさらに重くなります。
死亡事故の場合は1年以上20年以下の有期懲役、負傷の場合でも15年以下の有期懲役です。
自分だけでなく相手の人生も大きく狂わせることになりますので、絶対に飲酒運転をおこなわないようにしましょう。
本人だけでなく関わった人間も処罰の対象
飲酒運転による罰則は本人だけでなくそれに関わった人も処罰の対象になります。
たとえば、
- 飲酒運転を命令、容認した人
- 飲酒運転をおこなった車を提供した人
- 飲酒運転の原因となった酒を提供した人
- 飲酒運転の車に同乗していた人
も処罰の対象です。
自分が飲酒運転しないよう気をつけるとともに、周りの人が飲酒運転しないよう気をつけることも必要といえるでしょう。
アルコールを早く抜くには?
チューハイなどのお酒を飲んだ後にどうしても運転の必要がある場合、できるだけ早くアルコールを抜きたいところです。アルコールを早く抜くのに効果的な方法と意味のない方法を紹介します。
水分をしっかり取る
最も効果的といわれているのが水分をできるだけ多く取るという方法です。水分を取ることによって体内に残っているアルコールを排出する効果が期待できます。
また、アルコールには利尿効果があるため脱水状態になりがちです。それを防ぐためにも水分補給は重要といえます。
眠っているとアルコール代謝能力が下がる
睡眠を取るとアルコールが早く抜けると思っている人もいるかもしれませんが、実は睡眠中は血液の循環が悪くなり、アルコールを分解する肝臓に到達するアルコールの量が減るため、アルコール代謝能力が下がります。
このため、アルコールを早く抜くために眠るよりは、安静に過ごすほうがおすすめです。
ただし、睡眠不足の状態で車を運転するのは危険なので、睡眠時間はしっかり取るようにしましょう。
サウナや岩盤浴、スポーツは効果なし
汗をかくとアルコールが早く抜けるという考えも間違っています。汗をかくような行為をした場合、筋肉への血流量が増える一方で肝臓への血流量が減り、アルコールの分解が進まないのです。
また、汗をかくことで脱水症状が悪化する恐れがあるほか、アルコールを飲んだ状態だと血圧の急激な上昇が起きる可能性もあるので避けましょう。
お酒を飲んでから、しばらくして吐いても無意味
お酒を飲んでからしばらくした後で吐く行為も無意味です。
吐くことによって胃のなかに残っているアルコールを吸収する前に出すことはできますが、すでに体に吸収されてしまったアルコールを排出することはできません。
飲酒運転は他人の人生も自分の人生も狂わせる
アルコールが抜けていない状態で車を運転する行為は非常に危険であり、事故を起こす可能性が高まります。
単に罰金や免許停止で済めば幸運で、事故を起こしてしまうと他人の人生も自分の人生も狂わせてしまうでしょう。
アルコールに関する正しい知識を持ち、確実にアルコールが抜けた状態で運転するようにしてください。