タイヤの寿命はおおよそ5年ほどとされています。しかし5年が経過していない場合でも走行距離や見た目から、タイヤの寿命を判断し、交換しなければならないこともあります。本記事ではタイヤの寿命や交換時期の判断ポイント、長く使用する方法などを解説します。
タイヤの寿命はどれくらい?
車を安全に走行させるためには欠かせないタイヤ。適切なタイミングで交換しなければ、走行性能が落ちたり、思わぬ事故を招いたりしてしまいます。ではこの「適切なタイミング」とは一体いつなのでしょうか。
本章では、使用開始からの年数や溝の深さに着目してタイヤの寿命を解説します。寿命が近づいたタイヤは速やかに交換して、安全運転を心がけましょう。
使用開始から5年ほど
結論からいえば、タイヤの寿命は「使用開始から5年ほど」です。もちろんこれは、おおよその目安であり、走行距離などによって交換のタイミングは異なります。
ご存知の通り、タイヤはゴム製品です。使用年数によってゴムは劣化していくため、タイヤとしての性能を保てるギリギリのタイミングが「使用後5年以内」だということです。タイヤのゴムは、時間が経つに連れては油が減り、柔軟性が失われていきます。
使用開始から5年以上が経過したタイヤは、一度タイヤ販売店で点検を受けると良いでしょう。走行距離や劣化具合によっては、もう少し使用できる場合もあります。
残り溝4mm以下になったら交換
タイヤには溝があります。そしてタイヤの溝は走行していくうちに、どんどん浅くなっていきます。そのため、この溝の深さからタイヤの劣化具合を判断することができるのです。一般的には夏タイヤの交換時期は、この残り溝が4mm以下まですり減ったタイミングです。
タイヤにある溝や切れ込みのことを、総称して「トレッドパタン」と呼びます。そしてこのトレッドパタンには、以下3つの性能があります。
- 不要な水を除去する
- タイヤの駆動力・制動力の確保する
- 操縦の安定性・放熱性を向上させる
トレッドパタンが浅くなるにつれて、上記のような性能が徐々に低下していきます。いずれの性能も車を安全に走行させるためには欠かせないため、溝が4mm以下になったタイヤはできるだけ早めに交換しましょう。
スタッドレスタイヤの寿命
夏タイヤの寿命は4mmですが、冬に使用する「スタッドレスタイヤ」の場合は、交換時期の判断基準が少し異なります。地面の凍結や雪道でスリップしてしまわないように使用するスタッドレスタイヤ。本章ではスタッドレスタイヤについて、性能が保てるボーダーラインや残り溝のチェック方法などを説明します。スタッドレスタイヤも寿命がきたものは速やかに交換しましょう。
性能が保てるのは50%前後
タイヤとしての性能を保つことができるボーダーラインは、新品から50%までです。タイヤの50%以上が消耗してしまうと、グリップ性能が大きく低下しているため雪道を走行するのが困難になります。
タイヤのトレッドパタンは、夏タイヤよりも細かいという特徴があります。これはスリップを防ぐのはもちろんのこと、雪解け水を除去するためです。
トレッドパタンが摩耗し、タイヤの溝が浅くなってしまうと、除水効果やグリップ力が低下するため大変危険です。50%以上が消耗しているものは、速やかに交換しましょう。
プラットホームでチェック
タイヤの寿命は、タイヤについたプラットホームから判断することもできます。スタッドレスタイヤには、夏タイヤと同様に残り溝がわずかであることを知らせるスリップサインがあります。
しかしその他にも、タイヤが半分以上、消耗していることを伝える「プラットホーム」という部分があります。
プラットホームとは、ギザギザの突起物であり、これが近づいてきたら交換のサインです。スタッドレスタイヤとしての性能を維持できなくなってしまうため、すぐに交換してください。
100円玉で手軽にチェックする
スタッドレスタイヤは製品によって、寿命を100円玉で手軽にチェックすることができます。ここではブリヂストンから販売されているスタッドレスタイヤ「BLIZZAK」を例に挙げて解説していきます。
まず100円玉を用意し、タイヤの溝に差し込みます。このとき数字がタイヤに対して直角になるように差し込んでください。そして横からコインを覗き込むことでタイヤの残り溝をチェックできます。
数字の「1」が少しでも見えるようになっていれば、交換のタイミングと考えられます。焦って交換する必要はありませんが、そろそろ交換を考えるべきでしょう。「1」がはっきりと見えてしまっている場合は、かなりタイヤが摩耗しているといえます。すぐに交換しましょう。
タイヤの交換時期を判断するポイント
タイヤは本体の見た目はもちろん、寿命にはいくつもの判断基準があります。車の走行距離や使用年数、走行時の感覚(音)からも寿命を見極めることができるのです。ここではタイヤの交換時期を判断するポイントとして「走行距離」「見た目」「使用年数」「走行中の感覚」の4点を紹介します。
1項目でも当てはまっている場合は、そろそろタイヤを交換するタイミングかもしれません。
走行距離
まずは走行距離からタイヤの交換時期を判断する方法を紹介します。タイヤ交換を検討すべき走行距離は「32,000km」が目安となります。もちろんタイヤのサイズによって差が生じますが、一般的なサイズのタイヤであれば、走行距離5,000kmにつき1mm摩耗するとされています。多くの新品タイヤの溝は、約8mm程度です。
そこから計算をすると32,000kmを走った車のタイヤは、溝が1.6mmになっています。これは交換時期としてはぴったりなので、基準として考えておくと良いでしょう。
見た目
次に「見た目」から、タイヤの交換時期を判断する方法を紹介します。もちろんタイヤの溝も「見た目」といえますが、場合によっては溝がしっかりと残っているにも関わらず、ゴムが劣化しているというケースもあります。
まずはしっかりとタイヤを目視で確認してください。タイヤに傷や変形がないかを細かくチェックして見ましょう。
日頃からタイヤに目立った傷や亀裂、ひび割れなどが入っていないかチェックすることは、安全に車を走行させるためには欠かせません。タイヤの点検をルーティン化させ、日々のチェックを怠らないようにしましょう。
使用年数
使用年数からタイヤの交換時期を判断することもできます。タイヤを販売しているメーカーは、使い始めてから4〜5年が経ったら交換することを推奨しています。もちろんタイヤに消費期限などは設けられていませんが、使用年数に応じて交換するのは基準としてもわかりやすいのでおすすめです。
またタイヤはゴム製品であるため、まだまだ溝に余裕がある場合でも、時間の経過とともに劣化してしまいます。
しかし屋外に駐車されている車のタイヤは、5年が経過する前に寿命を迎えてしまう可能性もあります。
走行中の感覚
最後は車を走行している際の感覚から、タイヤの交換時期を判断する方法を紹介します。感覚といっても難しいものではなく、走行時のタイヤの音(ロードノイズ)を交換時期の基準にするという方法です。車の走行時にロードノイズが大きくなっていると感じたら、交換のタイミングです。
また音だけでなく、ブレーキの効き目が弱まってきたと感じた場合や乗り心地に違和感を覚えた場合も、一度タイヤをチェックしてみると良いでしょう。
雨の日に滑りやすくなるなどもタイヤの状態が劣化しているサインであるため、日頃の乗り心地はしっかり確認してください。
タイヤの寿命を延ばす方法
タイヤの寿命はある程度目安があり、気をつけていてもいずれは交換しなければなりません。しかしいくつかのポイントを押さえ、日々の点検をしっかりおこなっていれば、その寿命を延ばすこともできます。
本章ではタイヤの寿命を延ばす方法として「日々の点検」「空気圧点検を怠らない」「保管方法にも注意する」「定期的に位置を交換する」の4点を解説します。
日々の点検
タイヤの寿命を延ばすのはもちろんのこと、安全に運転するために欠かせないのが「日々の点検」です。
車に乗る前は、必ずタイヤの状態を確認するクセをつけておきましょう。タイヤの表面に傷がついていないか空気圧は正常か、残り溝はしっかりあるかなどを細かくチェックしてください。特に釘や石、ガラスなどの異物を踏んでしまった場合は、目視でもすぐに気づけるでしょう。日常の点検によって、タイヤの異常をいち早く見つけ、安全に運転しましょう。
空気圧点検を怠らない
日々の点検で、タイヤの表面をチェックしておくことはもちろん「空気圧」もしっかりとチェックすることも重要です。空気圧が適正に保たれていないと、タイヤの劣化を早めてしまいます。
空気圧が不十分なタイヤを使い続けると、走行時に大きく変形してしまいます。タイヤが地面に押し付けられるたびに、激しく摩耗してしまい、寿命を早めることにつながります。ガソリンスタンドでの給油の際など、できるだけこまめに確認しておきましょう。
保管方法にも注意する
適切な車の保管方法も、タイヤの寿命を延ばすことにつながります。ゴム製品であるタイヤは、直射日光や雨に弱いものです。そのため屋外で日に照らされたり、雨に濡れたりする時間が長いほど、タイヤの劣化は早まってしまいます。
車を駐車する場所(タイヤの保管場所)として理想的なのは、涼しく日光が当たらない場所です。どうしても屋外に停めなければならない場合は、専用のカバーなどをかけて保管しましょう。
定期的に位置を交換する
定期的にタイヤの位置を変えることも重要。これはタイヤの寿命を延ばすというより、4つのタイヤを均等に使用するためのコツです。タイヤは装着されている位置によって、摩耗に差が生じます。
一部のタイヤだけ極端に劣化したまま走行することも、思わぬ事故につながるため危険です。定期的にタイヤの装着位置を交換する、ローテーションを組んでおきましょう。
タイヤ交換の方法
基本的にはタイヤを交換する際は、整備工場などに持ち込んでおこないます。しかし器具さえあればタイヤは自分で交換することもできます。
ではタイヤを交換するためには、どのような道具が必要なのでしょうか。またどんな手順で交換すれば良いのでしょう。ここでは自分でタイヤを交換する方法について解説します。初めての方はよく確認してください。
必要なものを準備する
自分でタイヤを交換するためには、まず以下のような道具を揃えておきましょう。
- ジャッキ
- ジャッキスタンド
- レンチ
- タイヤ輪留め
- 軍手
- 空気圧計
- 空気入れ
ジャッキとは車の車体を持ち上げるために必要な道具です。ジャッキには、クランク棒を用いて車体を持ち上げる「パンタグラフジャッキ」と、油圧を利用して車体を浮かせる「フロアジャッキ」があります。
タイヤを交換する
必要な道具が揃った後は、いよいよタイヤを交換します。タイヤ交換の手順は、大きく以下の3つに分かれます。
- 車を平坦な場所に停める
- ホイールナットを緩める
- 車体を上げてタイヤを交換する
車を平坦で安全な場所に駐車したらホイールナットを緩めます。このとき完全に緩めず、車体をジャッキアップしてから最後まで緩めてください。
車体を上げたら、タイヤを交換します。交換する際は、必ず1輪ずつジャッキで持ち上げるようにしてください。
仕上げ
タイヤの交換が完了したら仕上げに入ります。緩めるときと同じように、軽くホイールナットを締めた後に車体を下げます。
完全に車体を下げてから、ホイールナットの本締めをおこないます。ホイールナットは対角(もしくは星型)を描くように、交互に締めてください。
ホイールナットを締める際、トルクレンチを使用することで、より作業がおこないやすくなります。ナットを締め終わったら空気圧をチェックし、適宜調整してタイヤ交換は終了です。
シーブンオフのタイヤはどう保管する?
夏タイヤからスタッドレスタイヤへ、またはその逆の場合、シーズンオフのタイヤをどのように保管するのかも寿命を延ばすうえで重要です。
タイヤを保管する場所としては、駐車するのと同じように直射日光や湿気の少ないところが理想です。紫外線はタイヤにとって天敵。劣化を早めるだけでなく、変色なども防ぐことができるよう日光の当たらない場所に保管しておきましょう。
寿命を迎えたタイヤは速やかに交換しよう
タイヤの寿命は「走行距離」「使用年数」「見た目」「走行中の感覚」といったポイントから判断できます。車のタイヤは走行距離の場合は32,000km、使用年数は4〜5年ほどが寿命です。また見た目が劣化していないか、走行時にロードノイズが大きくなっていないかなども、タイヤの寿命を判断する重要なポイント。寿命を迎えたタイヤは、思わぬ事故を防ぐために速やかに交換しましょう。