最近話題になることの多いエコドライブは、環境だけでなく人にやさしい運転習慣です。全部で10に分かれていますが、全部を知っていて実践している人は少ないかもしれません。
この記事は、エコドライブの概要とメリット、具体的な例を解説します。
エコドライブとは?
エコドライブとは、できるだけ温室効果ガスを排出しないように意識して自動車を運転することをいいます。
温室効果ガスは昨今の地球温暖化の主な原因です。地球は1880年から2012年までで平均気温が0.85度上昇したと推測されていますが、それが現状を放置すると22世紀を迎える100年間で2度から4度以上も上昇すると予測されおり、世界中のしくみが大きく変わりかねません。
温室効果ガスの発生にはさまざまな原因がありますが、中でも世界的に大きく取り上げられているのが自動車の排気ガスです。一人のエコドライブによる改善効果はわずかかもしれません。しかしそれは確実に地球環境の改善に役立ちます。
エコドライブは、これからの地球を守るための、私たちに直接できる活動なのです。
エコドライブ10が示す10の運転習慣
日本は世界的な自動車メーカーを抱える自動車工業立国だからこそ、エコドライブを推進し多くの国々の模範となる必要があります。そこで政府がエコドライブの具体的なテクニック、手段を10に絞って推進しているのがエコドライブ10です。
ここではそれぞれの項目を詳しく、わかりやすく解説します。
余裕があるからできるeスタート
eスタートとは、自動車の発進時にアクセルを一気に踏み込むのではなく、徐々に踏んでふんわりと発進することをいいます。
発進するときは大きな力が必要ですが、ある程度スピードが上がれば必要な力はわずかです。自動車も同じで、一気に踏み込んでもすぐにスピードは上がりません。むしろ燃料ばかり消費するだけでもったいない行為なのです。
eスタートの基準は、最初の5秒で時速20キロメートル程度とされ、これを習慣にするだけで燃費は10%ほど改善するといわれています。出かけるとき余裕を持っているからこそeスタートは可能です。おまけに少しだけサイフにやさしいメリットもあります。
ゆとりの車間距離で加減速の少ない運転を
普段あまり意識しないかもしれませんが、自動車は前を走る自動車に合わせてスピードを加減しています。車間距離が短いと加速はもちろん減速も、頻繁になりがちです。そのたびにアクセルを踏む、つまり燃料を多めに消費することになってしまい、エコとはいえません。
車間距離に余裕があれば、無理のないやさしい減速で気持ちの上でも落ち着いた運転が可能です。慌てて追いつく必要がないためやさしくふんわりと加速できるため、自動車の多い市街地でも2%、郊外では6%ほども燃費が改善するといわれています。
アクセルを早めに離して急減速を防ぐ
自動車はスピードに乗っていれば、アクセルを離しても慣性で進みます。エンジンブレーキの効果で徐々に減速しますが、ギアをロー(1の位置)やセカンド(2の位置)にしていない限り急に減速することはありません。先の信号が黄色に変わったら、おそらく前の自動車は止まります。それなら分かった時点でアクセルを離し、エンジンブレーキで少しずつ減速しておくのがスマートです。
少しずつブレーキをかけて止まるまでアクセルを踏まないため、燃費は約2%の改善が見込めます。
エアコンを適切に使って燃費アップ
真夏の昼間や真冬の朝の車内を快適にしてくれるエアコンは、今やなくてはならない装備です。しかしだからといって、それほど暑くない、寒くないときもなんとなく使ってしまっていませんか。例えば外気温25度のとき、エアコンを同じ25度に設定してオンにしておくだけで、燃費は12%も悪化するといわれています。
冬、暖房だけであればエアコンのスイッチをオフにして送風にするだけでも燃費の悪化を防ぐことが可能です。なんとなくしてしまう習慣にこそエコドライブのヒントがあります。
アイドリングゼロを心がける
ちょっとした待ち合わせや荷物の上げ下ろしだけだからと、エンジンをかけたまま停車していることがあります。このようなアイドリングは、エアコンがオフの状態でさえ10分間で燃料を130ccほども消費してしまう行為です。わずかな時間であれば、真冬でも暖機運転は必要ありません。こまめにエンジンを切るよう心がけましょう。
ただし、だからといって交差点での信号待ちで、手動アイドリングストップは危険です。停止中は方向指示器が作動しないことがあるため、特に車列の先頭付近や坂道では避けましょう。自動アイドリングストップ機能搭載の自動車であれば問題ありません。
余裕をもって出発して渋滞を回避
通勤や通学に慣れてくると、いつもの道だからと何も考えずに出発しがちです。しかし冬の天気の良くない日や、付近でイベントがある時期など、道路はさまざまな理由で渋滞の具合が変わります。そのため出かける前は少しだけ、渋滞や交通規制などの道路交通情報やカーナビなどでルートの状況を確認するのがおすすめです。
時間に余裕を持っていれば渋滞を回避するため、別ルートを選ぶこともできます。1時間の運転で10分間余計に走行したときの燃料消費の増加量は約17%です。まさに、早起きは三文の徳、のよい例といえます。
点検の習慣づけはまずタイヤの空気圧から
タイヤの空気圧は、ほっておくと徐々に減っていくものですが、JAFが公開している実験結果によると、適正な空気圧が30%低下すると燃費は最大6%以上悪化しました。60%低下すれば12%以上となっており、空気圧がどれほど財布に影響するかがわかります。
また坂道を下る惰性走行でも、適正空気圧が90.1メートルのところ、30%低下で83.5メートル、60%低下では何と62.2メートルと、大きく影響していました。これは、タイヤの空気圧が低いほど、同じ距離を進むためにより大きなエネルギー、つまり燃料が必要であることを示しています。
給油の何回かに一度くらいは空気圧を点検しましょう。それだけで少しサイフにやさしい効果が期待できます。
参考:タイヤの空気圧不足、燃費への影響は?(JAFユーザーテスト)
いらない荷物は積んだままにしない
普段からよく自動車を使う人ほど「いつか使うかもしれない」と言って、めったに使わない荷物を積んだままにしがちです。しかしそれは自動車が、余計な荷物も運んでいることであり、燃費には確実に影響します。
例えば重さ100キロの荷物を積んだまま走行したときの燃費の悪化は約3%です。ちりも積もれば山となるといいます。今自動車に積んでいる荷物を一つずつ確認してみましょう。いらない荷物が減れば車内もすっきりするはずです。
事故や渋滞の原因となる迷惑駐車はやめよう
特に交通量の多い道路や交差点付近で駐車すると、それだけで渋滞の原因になってしまいます。渋滞すれば通行するすべての自動車の燃費が悪化するのはもちろん、ドライバーの死角を作ってしまうため交通事故の原因にもなりかねません。
迷惑駐車は「ほんの数分間だから」など安易にしてしまいがちです。しかしその時間内に通行する自動車は多く、ドライバーは本来必要のない注意をしなくてはなりません。短時間でも付近の駐車場などを利用して、他の迷惑になるような行為は慎みましょう。
自分の運転の燃費を常に意識しよう
ここまでのエコドライブテクニックをいくら実践しても、どれくらい効果があったのかがわからなければよかったのかどうかわかりません。エコドライブを実践するなら、まずは自分の自動車、自分の運転の燃費がどのくらいなのかを計算してみましょう。
とはいえ走行の量や質は毎日異なるため、1週間や1ヵ月など一定期間ごとに計算して記録し、比較することをおすすめします。そうすればおよその燃費が把握できるため、エコドライブの効果も実感できるはずです。
エコドライブの3つの効果
エコドライブには地球環境改善のための温室効果ガス発生を抑えるという最終目標があります。とはいえそれだけでは長続きしないかもしれません。もっと身近で、実感しやすい効果を意識することが大切です。
ここではエコドライブの効果として、普段からドライバーが実感できるものを3つ解説します。
燃費アップで環境にやさしい
例えば前の給油のときより、今回は燃費が8%改善したとします。振り返ってみても、通勤や普段使いの走行距離はかわらない、変えたのはエコドライブを意識したくらいであれば、メーターの指す燃料残量は、間違いなくエコドライブの効果です。わずか1目盛りでも改善していれば、少ないながらも地球環境改善に貢献したことは間違いありません。
おサイフにもやさしいから余裕が生まれる
エコドライブで燃費が改善したのなら、間違いなく燃料代は下がります。一度の給油では数十円、百数十円くらいかもしれませんが、何もしなければ残っていなかったお金です。このまま続ければ年間でいくら節約できるか計算してみましょう。走行距離によってはかなりの金額にのぼるはずです。
わずかながらもお金に余裕が出てくれば、少なからず気持ちにも余裕が生まれます。気持ちの余裕は生活のリズムや余暇の使い方にも影響するでしょう。
余裕があるからできる人にやさしい運転
時間や気持ちに余裕があれば、自動車の運転でも周囲に適切に目配りできるようになります。もはや時間ギリギリに起きて遅刻しないか心配しながらの通勤ではありません。これまで気づかなかったような死角に注意したり、少しふらついている自転車の後ろで対向車が通り過ぎるのを待ったりと安全で人にやさしい運転ができるはずです。
これは他人のためだけではありません。自分が事故を起こさず、毎日を安全、安心して暮らすためでもあります。
すぐできるエコドライブのコツ
エコドライブは、エコドライブ10の各項目をきちんと守るだけでも効果は得られます。しかしあえてまとめるとすれば、あげられるのは次の3つです。
- 急加速と急減速をしない:燃料のムダをなくす
- できるだけ一定のスピードで走行するよう周囲と調和する:周囲の状況をよく見て合わせる
- エコドライブを常に意識する:うっかり忘れないよう工夫する
徹底するには、普段の生活での心がけも必要です。疲れたまま運転しないで済むよう十分な睡眠や休息をとる、時間に余裕を持って行動する、定着するまで車内の見えるところにメモを貼るといった方法をおすすめします。
エコドライブで優しい運転習慣を身につけよう
地球温暖化から温室効果ガス、エコドライブという名前は知っていても、進んで実践しているドライバーは少ないかもしれません。それは具体的な行動の基準やテクニック、つまり自分でもできるレベルにまで落とし込めていないことが理由の一つです。
エコドライブ10の各テクニックが分かれば、今日から始められます。地球の環境悪化は待ったなしです。ぜひ今日から、エコドライブを意識してまずはどれか1つを徹底することから始めてみましょう。