中古車を購入を考える際、多くの人が価格の次に注目するのは「走行距離」ではないでしょうか。中古であってもより状態の良い車を選ぶ場合、注目すべきは走行距離です。本記事では、どのように走行距離をチェックすべきか説明します。中古車を購入する際の参考にしてください。
そもそも走行距離とは?
「走行距離」というのは、自動車が移動した距離のことです。車にはこの走行距離を測定するための計器がメーターに装備されており、その車が進んだ距離を数値で示すもの。走行距離は、車の価値を判断する指標として利用されるだけでなく、目的地までの距離を把握するのにも役立つデータです。
中古車を売る予定があったり、燃費性能を調べたりする場合には、走行距離の計測方法を知っておくとよいでしょう。
基本的に、走行距離には2つの種類があります。車が製造されてから現在までの「総走行距離(オドメーター)」と、出発地から目的地までの「区間走行距離(トリップメーター)」です。
車によっては、オドメーターとトリップメーターの両方が同時に表示される場合もあれば、どちらか一方しか表示されない場合もあります。双方の表示が備わっている場合、切り替え用のボタンが備わっており、必要に応じて希望の走行距離を選択可能です。数字の隣に「ODO」と表示されていればオドメーターが、または「TRIP」と表示されていればトリップメーターが選択されています。
自動車の年間平均走行距離
そもそも、走行距離の平均はどのくらいなのでしょうか。自動車保険サービスを提供している「ソニー損保」が実施したアンケートによると、次のような結果になりました。同社は月に1回以上車を運転するという、18〜59歳の男女1,000名を対象に、年間走行距離に関するアンケートを実施。その結果、全年代を通しての平均は、6,791kmだったそうです。もっとも多い層は「3,000km超、5,000km以下」であり、次点で「5,000km超、7,000km以下」です。
本章では、同アンケートをもとに、年代別走行距離や男女別走行距離、車種別走行距離について深堀していきます。
年代別の平均走行距離
年間走行距離について、全年代を通した全体の平均は前述した通りです。では年代別に走行距離の年間平均は、どのようになっているのでしょうか。以下の表をご覧ください。
年代 | 走行距離の平均 | もっとも割合の多い層 |
10代・20代 | 7,098km | 5,001km〜7,000km以下(29.2%) |
30代 | 6,868km | 5,001〜7,000km以下(23.6%) |
40代 | 6,818km | 3,001〜5,000km以下(28.8%) |
50代 | 6,380km | 3,001〜5,000km以下(29.6%) |
10代から30代でもっとも割合が多いのは、5,001〜7,000km以下でした。これは片道30分の通勤・通学に車を使用しているためと考えられます。40代以降でもっとも割合の多い「3,001〜5,000km以下」は、近所の買い物などをメインに車を使用していると、おおよそこのくらいの走行距離です。
男女別の平均走行距離
次に、男女別の走行距離について見ていきましょう。まずは以下の表をチェックしてください。
走行距離の平均 | もっとも割合の多い層 | もっとも割合の少ない層 | |
男性 | 7,458km | 5,001〜7,000km以下(20.8%) | 16,001以上(5.4%) |
女性 | 6,124km | 3,001〜5,000km以下(31.2%) | 16,001以上(3.0%) |
走行距離の年間平均を見ると、男性の方が女性よりもやや長いと分かります。また表では、もっとも割合の多い層のみ記載していますが、全体のバランスも特筆すべきポイントでしょう。男性は5,001〜7,000km以下であると回答した人が全体の20.8%であり、次に多い3,001〜5,000km以下と回答した人が20.4%でした。これに対して女性は、3,001〜5,000km以下であると回答した人が、全体の31.2%であり、次点は5,001〜7,000km以下で全体の24.2%。
3位以降の層を見ても男性は、どの層の割合にも大きな差はなく、女性は多い層と少ない層の差が、明確化している傾向にあります。もっとも割合の多い層と少ない層の差が大きいのも、女性です。この結果から女性の方が男性よりも、車で長距離移動する人とほとんど乗らない人の差が大きいと分かります。
車種別の平均走行距離
車種別に走行距離を見ていくと、どのような結果になるのでしょうか。以下の表をご覧ください。
車種 | 年間平均走行距離 |
乗用車(自家用/事業用) | 10,575km/63,113km |
8トン以上の貨物車(自家用/事業用) | 37,334km/67,771km |
8トン未満の貨物車(自家用/事業用) | 14,325km/38,627km |
軽貨物車 | 8,207km |
乗合車 | 55,365km |
二輪車 | 3,002km |
参考|国土交通省「継続検査の際の整備前自動車不具合状況調査」
車種によっても、年間平均走行距離には差があります。また自家用と比較すると、いずれの車種でも事業用に使用されている車の年間平均走行距離は長くなっています。
【使用用途別】車の年間走行距離の目安
皆さんは通常どのような場面で車を使用されるでしょうか。例えば、毎日通勤や通学で車を利用される方や、週末に外出する際にのみ車を使われる方など、さまざまな使い方があります。実際に車に乗る目的によって、平均的な走行距離は大きく異なることもあるでしょう。本章では「使用用途別」に、車の走行距離の目安を解説していきます。
近所への移動や買い物に使う場合
車は主に近隣のスーパーや買い物に行く際に使用する場合、走行距離はわずかです。通年で約3,000km程度が目安。中古車を購入する場合、年間走行距離が3,000km程度の車両であれば、あまり長距離運転に使用されていないと考えられるでしょう。
3,000km程度の中古車を購入する場合、新車に匹敵するほど状態の良い車が見つかることもあります。外装も美しく、年式も比較的新しい車が多く見られます。逆に車を売却する際も、走行距離が3,000km程度の車両は高額で取引されます。
新しいモデルを選びたい場合は、走行距離3万kmを目安にしてみると良いでしょう。車によっては、次回の車検までの期間も残っているかもしれません。
レジャーやドライブによく利用する場合
週末に家族で外出やレジャーを楽しむ際に車を利用する場合、1回の外出で長い距離を移動することが多くなるでしょう。年間平均で5,000~10,000km程度の走行距離が見込まれます。
「価格が手ごろであれば、最新の機能でなくても良い」と考える方にうってつけです。3,000km前後の車両は高額になりやすく、かといって10,000~15,000kmの車両は念入りなメンテナンスが必要です。中古車として購入する場合も、5,000km程度の車両に絞って探してみると、リーズナブルな価格で上質な車が見つかりやすいかもしれません。
年間走行距離が5,000~10,000kmの車である場合、現行モデルが見つかる可能性も高いでしょう。
通勤・通学に利用する場合
車を通勤や通学に使用する場合、週に最低でも5日は車に乗ることになるため、年間の走行距離は長くなるかもしれません。さらに休日にもお出かけをすると考えると、年間平均で10,000~15,000km程度となるでしょう。コストを重視する方には、10,000~15,000kmの中古車が適しています。「予算を抑えつつ車を手に入れたい」や「コストのかからない中古車を探している」という方は検討してみるのも良いかもしれません。
走行距離が10,000~15,000kmの車の場合、外観や内装にやや古さを感じる部分はあるかもしれません。しかし走行や電装部品に大きな問題がない限り、まだまだ現役で十分に活躍できることでしょう。
社用車として利用する場合
日々の業務で使用する社用車は、非常に長距離を走行するのが一般的です。短距離の移動が多いこともあれば、遠方への出張などで長距離を走行することもあります。したがって、年間の走行距離は15,000km以上に達することもあります。15,000km程度の車両を中古車として購入する場合は、しっかりとメンテナンスがされているのか、他の車両以上に入念にチェックしておかなければなりません。
中古車として売却する場合は「過走行車」として扱われる可能性があるため、高額での売却は難しいでしょう。あまりにも走行距離が長い場合は、売却を諦めて廃車にするのも処分方法の一つです。
走行距離が増えるとどうなる?
車の走行距離が増加すると、いくつかの懸念点が浮かび上がってきます。その主なものは「維持費」と「修理費」です。これから中古車を購入する方は、維持費・修理費と車両価格を天秤にかけて、比較しなければなりません。
本章では、走行距離が増えることでどのような影響が生じるのか、具体的に説明します。走行距離が長い車を、保有している方やこれからは購入しようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
維持費が上がっていく
走行距離が増えると、安全な走行を維持するためにかかる費用が上がります。走行距離が増えるほど、タイヤやブレーキパッドなどの消耗部品が摩耗し、高額な修理費用を伴う問題が発生しやすくなるためです。
たとえば、ラジエーターやファンモーターなどの故障、エンジンオイルの減少などが考えられます。これらのパーツは、修理や交換に数十万円かかることもあり、車検ごとに支出が増える可能性もあるでしょう。このような状態の車を保有している方は、速やかに新しい車への移行を考慮してみてください。
もちろん適切なメンテナンスを行えば、さらなる走行が可能です。中古車を購入する際には、総走行距離をメンテナンスの目安としましょう。適切なメンテナンスは車の状態を良好に保つだけでなく、部品の寿命を延ばし安全性を確保してくれます。
車の価値よりも修理代が高くなる場合がある
走行距離が長い車は、修理費用が車の価値を上回ることがあります。車の売却時には、走行距離が価値に直結。価値と走行距離は逆比例するため、高走行距離の車ほど価値が低下します。
これは、修理費用が車の価値を上回るケースもあるためです。特にエンジンやトランスミッションの故障は致命的で、修理に10万円以上かかることもあります。車の価値よりも修理費用が高い場合は、車の買い替えを考えるべきタイミング。特別深い思い入れがなければ、修理が必要なタイミングで、次の車を検討することも一つの選択肢です。
中古車を走行距離で選ぶ際の目安
中古車の場合、走行距離に応じて車体価格が大きく変動します。中古車の走行距離ごとの特徴は以下の通りです。
- 車のコンディションが重要な方は、3万km以下
- 価格と車の状態のバランスを重視する方は、5万km以下
- コストを抑えたい方は、10万km以下
本章では上記3点に分けて、走行距離と車両状態の目安を解説します。ぜひ中古車選びの参考にしてください。
3万km:状態が良い車を望む方向け
車のコンディションを重要視している方は、3万km以下が目安です。走行距離が3万km以下の中古車は、使用頻度の少ない車両であるため、傷や劣化も少ない傾向があります。年式が新しい場合、新車とほぼ同じ状態の車も存在します。
ただし年式が新しいため、価格もそれほど下がっていないことが多いです。年式が古くても走行距離が3万km以下の中古車は、コンディションが非常に良い車両。いずれの場合も、やはり5万kmや10万kmほど走行した車と比較すると、価格は高くなってしまいます。価格よりも車の状態にこだわる方は、走行距離3万km以下の車を検討してみてください。
5万km:価格と状態のバランスを重視する方向け
価格と車の状態のバランスを重視する方は、総走行距離5万km前後の車両がおすすめです。走行距離が5万kmを超えると、中古車の価格が下がる傾向があります。通常5年で走行距離が5万km程度とされ、この時期に新しい車への乗り換えを検討する人も多いようです。
10万km以上の車両と比較すると状態も良く、3万km未満の車と比べるとリーズナブル。価格と状態のバランスを考えるなら、走行距離が5万kmを超える車を検討するのが良いでしょう。
10万km:安さ重視で選びたい方向け
コストを抑えたい方は、10万km前後の車両が良いでしょう。5万km前後の車両よりも、低価格の中古車を求めるなら、走行距離が10万km前後の車がおすすめです。この距離になると、市場価格も大幅に下落します。
もちろん10万km以上でも、適切なメンテナンスが行われていれば、安全に走行できます。ただし、メンテナンスを怠っている車両は、故障のリスクが高まるため注意しなければなりません。購入を検討する際には、点検整備記録を確認することをおすすめします。
中古車を選ぶ場合の走行距離に関するポイント
中古車の車体価格には、走行距離が大きな影響を及ぼしますが、走行距離だけに焦点を当てて検討する際には慎重さが求められます。メーターを含めた以下のポイントも、事前に確認しておきましょう。
- オドメーターや契約書上の走行距離
- メーターの改ざんが行われていないか
- トラブルが発生した場合の相談先
走行距離はメーターを見ればすぐに確認できますが、業者によってはそうもいきません。上記3点について、本章で解説します。
オドメーターや契約書で走行距離を確認する
走行距離を確認する方法は、オドメーターを見ることが一般的です。他の方法としては、タイミングベルトをチェックすること。通常走行距離が10万kmに達すると、タイミングベルトの交換が推奨されます。そしてタイミングベルトには、交換時期とその時点の走行距離が記載されたステッカーが貼られています。この数字とオドメーターの表示を比べてみることで、車の走行距離を確認できるでしょう。業者としても、メーターの改ざんはできても、タイミングベルトまで改ざんすることは難しいため、忘れずに確認してください。
中古車の売買契約時に用意される契約書には、走行距離などの車両情報が記載されています。この契約書を確認することも、正確な走行距離を把握するうえで重要です。
メーターの改ざんが行われていないか確認する
以前は、中古車の走行距離は、車の価格に大きな影響を及ぼすため、過去には車の価値を高めるために、メーターの巻き戻しを行ったのち、オークションに出品されるケースが存在しました。現在では、車体番号による走行距離の管理システムなどによって、メーターの改ざん対策が取られており、減少傾向にあります。とはいえ、完全に根絶されたわけではありません。
メーターが交換や改ざんされている場合、運転席側のセンターピラーにシールが貼られていることがあるため、確認してください。新しいメーターパネルに交換された場合、その後の走行履歴が不明瞭となる場合があります。しかしこのような場合でもメーター改ざん車として扱われ、その旨のシールが貼られます。
シール以外でメーター改ざんの有無を確認する方法として、点検整備記録簿をチェックすること。車検ごとに走行距離が記録されている欄が存在し、これを遡って確認できます。最新の記録簿の走行距離よりも短い場合などは、メーターの改ざんが疑われます。
トラブルが発生した場合の相談先
メーターなどには、十分気をつけていたとしても、購入前に気づかないことがあるかもしれません。中古車を購入した後で、メーターを操作して走行距離を減らすなどの不正が疑われる場合は、専門の機関に相談することを考えましょう。
このような相談をする場合、自動車公正取引協議会や消費生活センターが利用できます。販売業者にクレームを申し立てても、不正行為が行われている業者から誠意のある対応は、期待できません。
上記に相談しても、解決が難しい場合は弁護士に相談するという手もあります。各地域で無料の法律相談が提供されているため、こちらを利用してアドバイスを受けることもおすすめです。
走行距離を理解して快適なカーライフを送ろう
購入する中古車を選ぶ際、車の走行距離は重要な判断基準です。車と走行距離の関係を正確に把握し、所有後の走行距離を事前にシミュレーションすることで、中古車の購入が適しているのかが判断できるでしょう。
逆に、現在保有している車の走行距離が15,000km以上に達しており、過走行車となる場合は、売却ではなく思い切って廃車にしてしまうのもおすすめ。どこの廃車専門業者へ依頼するか悩んでいる方は、ぜひ「廃車ひきとり110番」にご連絡ください。