今や1人1台とも言われる自動車は、毎日の暮らしに欠かせないものになってきました。しかしだからこそ、トラブルが起きてしまうと戸惑い、どう対処すればいいかわからないことも少なくありません。そのトラブルの1つが、エンジンのオーバーヒートです。
直訳すれば「高すぎる温度」となりますが、そのとき自動車に何が起きているのか正確に知る人は少ないかもしれません。そこでここでは、エンジンがオーバーヒートするとはどういうことか、またオーバーヒートしたときどのように対処すればいいか、その原因を含めて解説します。
車のエンジンのオーバーヒートとは?
オーバーヒートとは、自動車のエンジン本体の温度が高くなり過ぎている状態をいいます。エンジンは、ガソリンと空気の混合気を爆発、燃焼させて動力を生み出す、自動車の心臓部ともいえるパーツです。
そのため通常動作させるだけでもかなりの高熱になりますが、通常の範囲内であれば十分冷却されるため、一定以上の熱を持つことはありません。ただ、冷却水そのものが熱くなってしまうほどになるとエンジンは適切に冷却できない、つまりオーバーヒートとなってしまうのです。
オーバーヒートはエンジンがうまく動作しないだけでなく、最悪の場合エンジンが壊れてしまうこともあり得るため、普段からの予防が必要なトラブルといえます。
エンジンがオーバーヒートしたときのの具体的な症状
オーバーヒートが起きてしまうと、自動車のさまざまなところに症状が現れます。どのようなトラブルも損害をできるだけ抑えるためには早期の発見、対処が大切です。次のような症状が見られたらオーバーヒートの可能性を考えましょう。
水温計に異常が起きる
オーバーヒートになると、冷却水の温度が上がりすぎるという、異常が現れます。冷却水の温度をしめすのは、スピードメーターの近くの「℃」または「H〜C」と書かれている水温計です。水温計に異常が起きたら、オーバーヒートとなっている可能性があります。
正常な動作中なら、水温計の針が指すのは「H」と「C」の中ほどです。しかしオーバーヒートにより冷却水の温度が上がると針は徐々に「H」に近づき、ついには超えてしまうこともあります。
最近は水温が針ではなく数値で示される車種もありますが、その場合の基準は水温115℃です。115℃を超えていたらオーバーヒートとなっている可能性が高いといえます。
走行に違和感を感じるようになる
オーバーヒートは自動車の走行にもさまざまな影響を与えます。走行中、次のような違和感を覚えたら、オーバーヒートの可能性を考えましょう。
- アクセルを踏んでいないと止まる(アイドリングができない)
- アクセルを踏んでもいつものように加速しない
- エンジンの回転数が安定していない
さらに悪化すれば、エンジンが停止してしまうこともあり得ます。
異音・異臭がする
オーバーヒートになるとエンジンは、「キンキン」や「カンカン」、「カタカタ」といったノッキング音(なにかをノックしているような音)を発し始め、ボンネットからは「キーキー」という高い音が聞こえるようになります。
またニオイも、冷却水漏れや蒸発では「甘いニオイ」が、より深刻な状態になればオイルが焼ける「焦げ臭いニオイ」がし始めたら注意が必要です。悪化する前に速やかに整備工場などに持ち込みましょう。
ボンネットからけむりが発生する
ボンネットの隙間から煙が漏れ出てきたら、オーバーヒートしている可能性があります。この煙は水蒸気、つまり気化した冷却水です。ここまでくるとエンジンは、オーバーヒートによってかなり大きなダメージを負っているでしょう。
冷却水の入っているラジエーターのキャップには、内部が一定の圧力を超えると弁のように働き、水蒸気を逃がす役割があります。水蒸気の発生は、つまり冷却水の温度が高い、沸騰している状態です。もはやエンジンは冷却できない、深刻な状態にあるといえます。
エンジンがオーバーヒートする原因
エンジンが突然オーバーヒートしてしまうと、生活のさまざまなところに影響がおよんでしまいます。起きてしまったのならできるだけ早い対処を必要としますが、原因が分かるなら発生しないよう予防もできるはずです。
ここではオーバーヒートの原因を紹介し、予防のために普段の自動車の取り扱いについて注意しておきたい点を考えてみましょう。
冷却水不足や冷却システムの異常
エンジンが適切に冷却されていればオーバーヒートは発生しません。つまり冷却するしくみを正常に維持しておけば、オーバーヒートを防ぐことも可能です。
エンジンは、エンジンの熱で温められた冷却水を、ラジエーターや冷却ファン、ウォーターポンプなどによって冷却し、再びエンジンに戻して冷却されます。そのため、冷却水を循環させるウォーターポンプに不具合があったり、ホースに破損などがあったりすれば、冷却システムは正常に稼働しません。
また冷却水が不足していたり、交換から時間が経ち過ぎていたりすると劣化し、本来の機能を果たせなくなる可能性もあります。
エンジンオイルの不足や不具合
エンジンオイルは、エンジン内部の部品を滑らかに動作させる役割を持っていますが、エンジンの持つ熱を外に逃がすという別の役割もあります。そのためエンジンオイルも、交換せず不足したまま、劣化したままにすると、エンジン内部の摩擦熱が上がりオーバーヒートの原因になってしまうため注意が必要です。
負荷がかかりやすい走行
冷却システムが正常に働き、エンジンオイルが適切に交換されていても、本来の能力以上の走行をすると、エンジンに大きな負荷をかけてしまうためオーバーヒートしやすくなります。ここでいう本来の能力以上の走行とは、次のような走行です。
- 長い坂道を低速ギアのまま、高い回転数で走り続ける
- 渋滞などで長時間十分な空冷ができない
- ラジエーターの前をふさいだまま走行する
どれも「長時間負荷をかけ続ける」「冷却が妨げられる」状態での走行です。このうち坂道の低速ギアでの走行は間違いではありません。しかし高い回転数が続くとオーバーヒートはしやすくなります。
エンジンがオーバーヒートしたときの対処法
なかには突然オーバーヒートしてしまい、どうすればいいのかわからな苦なる場合もあります。しかしまずはすぐになにかしらの行動を起こし、一刻も早く対処することが大切です。
ここではエンジンがオーバーヒートしてしまったときの対処法を解説します。
1.速やかに安全な場所へ停車する
オーバーヒートしてしまったら、何よりもまず自動車を安全に停車させることが大切です。オーバーヒートしたまま走行すればエンジンのダメージが増える、また突然の停車によって事故を起こす可能性もあります。
停車させるのは、車を安全に停車できる広い場所が理想です。しかし、近くになければ他の自動車の走行を妨げない道路脇でもよいでしょう。
ただ、停車してすぐエンジンを切ると、冷却水やエンジンオイルの循環が止まり、エンジンは焼き付いてしまう可能性があります。この段階ではまだ、エンジンはかけたままにしておきましょう。
2.アイドリング状態でエンジンルームを確認する
水温計が上がり切っていなければ、まだ冷却システムは復旧する可能性があります。エンジンをかけたままアイドリング状態で、水温が下がるかどうかを確認しましょう。
もし水温が下がったら走行は可能ですが、水温計がHに近ければ依然として異常な状態にあるため、できるだけ早く整備工場などに持ち込み対処してもらう必要があります。
また水温が下がらなければ、まずはエンジンを切り、熱を冷ますことが大切です。
3.ボンネットを開けた状態でしばらく待つ
次はオーバーヒートによって熱を持ったエンジンの熱を冷ますために、ボンネットを開け風通しのよい状態でしばらく待ちましょう。
ただしこのとき、冷却水のリザーバータンクやラジエーターのキャップの取り扱いには注意が必要です。熱が十分下がっていないと100℃以上に熱せられた冷却水によって、大火傷を負う可能性があります。
4.ロードサービスなどに連絡する
冷却水やエンジンオイルに異常があり、エンジンを冷やしても症状が改善しない場合は、オーバーヒート以外のトラブルが発生している可能性もあります。自分だけでの対処が難しいと感じたら、速やかにロードサービスや、加入している自動車保険会社または契約しているロードサービスに連絡しましょう。
オーバーヒートの対処だけでも、手順を誤るとよりエンジンを痛めてしまう可能性があります。無理をせず、専門の業者に頼る方が安心で、しかも安全に対処できるでしょう。
オーバーヒート予防のために確認するべき項目
突然のオーバーヒートへの対処法も、普段から予防できていれば必要ありません。ただ予防のためには、自動車のとくにエンジン周りの状態を、なにかの基準に沿って確認しておく必要があります。オーバーヒートの予防で確認するのは、およそ水温計と冷却水、エンジンオイルの3つです。
ここではオーバーヒート予防のために、確認すべき3つの項目と確認方法を解説します。
水温計
オーバーヒートは、まず水温計に異常として現れます。ところが水温計がどれなのか、みてもそれがなにを意味しているのかがわからなければ意味がありません。もし「水温計がどれかわからない」なら、まずは水温計を見つけることから始めるのもよい方法です。
詳しい人に尋ねられれば、どの状態が正常で、どうなると異常なのかまで教えてもらえるかもしれません。普段自動車に乗るとき、ときどき水温計で状態を確認しましょう。
冷却水
冷却システムの中で、冷却水が不足しているとオーバーヒートは起こりやすくなります。そのためオーバーヒートを予防するには、普段からリザーバータンク内の冷却水の量をチェックし、不足していないか、減り方が早過ぎないかを確認することが大切です。
ただ減っているだけなら補充すればよいですが、減り方が早すぎる場合はラジエーターキャップの不良や、ホースの破損が考えられます。できるだけ早く修理・交換しておきましょう。
エンジンオイル
エンジンオイルは、エンジンを切ってしばらく経ってから、エンジンオイルのレベルゲージを抜いてチェックします。レベルゲージの先端についたオイルをキッチンペーパーやウエスで拭き取り、ゴミやホコリがついていないことを確認して元に戻し、もう一度抜いて先端のオイルをチェックしましょう。オイルがメモリの適正値なら量は不足していません。
またオイルをキッチンペーパーに滴らせ、スラッジ(燃えかす)以外のオイルが周りに広がるようなら交換は不要です。しかしスラッジ混じりの黒いオイルが広がるようなら、オイルは交換が必要なほど汚れています。速やかに交換して、オーバーヒートのリスクをできるだけ下げましょう。
オーバーヒートした時の修理費用の目安
オーバーヒートになると自動車が使えなくなるだけでなく修理が必要です。修理には費用がかかるため、できるだけ普段から予防しておきたいところでしょう。次の表で、オーバーヒートの対処で必要になる費用を示しました。
冷却水補充 | 1,000〜3,000円程度 |
エンジンオイル交換 | 1,000〜4,000円程度 |
サーモスタット交換 | 6,000〜15,000円程度 |
ラジエーターホース交換 | 10,000〜20,000円程度 |
ラジエーター部品交換 | 20,000〜50,000円程度 |
ラジエーター交換 | 20,000〜80,000円程度 |
冷却用電動ファン交換 | 20,000〜100,000円程度 |
ウォーターポンプ交換 | 60,000〜70,000円程度 |
冷却水やエンジンオイルなどの補充は定期的に、その他の部品交換も次回の交換時期をきちんと把握し、適切に交換しておくことが大切です。もし特定のパーツに故障が多く、それが原因でオーバーヒートを起こしていれば、自動車の買い替えを検討するのもよいでしょう。
修理費用が高額な場合は処分も検討してみよう
オーバーヒートには必ず原因があり、適切にメンテナンスすることで予防も可能です。しかしそれでもよく発生する、または修理費用が高額になってしまったというケースもあり得ます。そのようなときは買い替えるため、今の自動車の処分も検討してみましょう。
ただ、そのような自動車は一般に値段がつかなかったり、処分にかえって費用がかかってしまったりする場合もあります。そのようなときは、廃車買取を専門に取り扱う「廃車引き取り110番」にご相談ください。
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