自動車事故に遭って自動車がまったく無事だというのは稀です。修理で元通りになるならまだよい方で、ひどければそのまま廃車になってしまうケースも少なくありません。ただ廃車の手続きやかかる費用について詳しく知っている人は多くないでしょう。
ここでは事故に遭ってしまった普通自動車を廃車にするとき、知っておきたい手続きのしくみや費用を解説します。
事故車の廃車手続き方法と流れ
一口に事故車を廃車にするといっても、置かれた状況はさまざまです。ただ乗れないために解体までしてしまう、または一時的に乗らないため自動車を保管したいといったケースがあり、廃車手続きは大きく3つに分けられます。
ここでは事故車を含めた普通自動車の廃車手続きの種類と流れを詳しくみていきましょう。
永久抹消登録
事故に遭った普通自動車が修理できない、または修理できても安全面に不安があるから乗れないといった場合は、自動車の登録を永久に抹消する「永久抹消登録」手続きをします。
永久抹消登録は、事前に自動車を解体することから始める手続きです。
- (手続きする前に自動車を解体してもらう)
- ナンバープレートと必要書類をそろえ、管轄の陸運支局へ永久抹消登録を申請する(解体終了後15日以内)
- (車検の有効期間が一定以上残っている場合)申請と同時に自動車重量税の還付も合わせて手続きする
- 手続き後、自賠責保険の保険期間が一定以上残っていれば、保険会社に申請して保険料の一部が還付される
- 後日、自動車税が還付され、手続きを済ませていれば自動車重量税も還付される
自動車税や自動車重量税の還付は、4月を基準に月割で残額が計算されるしくみです。手続きが3月だと還付はされません。
一時抹消登録
なんらかの理由で事故車を解体せず保管しておきたい場合は、一時抹消登録の手続きをするとかかる税金を少なく抑えられます。一時抹消登録ではナンバープレートを返却するため再登録するまで公道では運転できません。
一時抹消登録の手続きは、まずナンバープレートを外すことから始めます。
- (手続きする前に自動車整備工場などでナンバープレートを外してもらう)
- ナンバープレートと必要書類をそろえ、管轄の陸運支局で一時抹消登録を申請する(一時抹消登録証明書が交付されるため大切に保管しておく)
- 手続き後、自賠責保険の保険期間が一定以上残っていれば、保険会社に申請して保険料の一部が還付される
- 後日、自動車税が還付される
一時抹消登録にすると、車検の残り期間に応じた自動車税の還付は受けられますが、自動車重量税は還付されません。これは自動車重量税の「車両の解体による永久抹消登録が必要」という還付条件に当てはまらないためです。
解体届出
一時抹消登録していた事故車を解体し、登録を抹消するときは解体届出を手続きします。解体届出は事前に自動車を解体することから始める手続きです。
- (手続きする前に自動車を解体してもらう)
- 一時抹消登録証明書などの必要書類をそろえ、管轄の陸運支局で解体届出を申請する(解体終了後15日以内)
- (車検の有効期間が一定以上残っている場合)申請と同時に自動車重量税の還付も合わせて手続きする
- 手続きを済ませていれば、後日自動車重量税が還付される
解体届出に必要な書類は地域によって異なる場合もあるようです。手続きの前に管轄の陸運支局へ確認しましょう。
事故車の廃車手続きに必要な書類
廃車は目的によって手続きが異なるため、それぞれに必要な書類にも違いがあります。とはいえなかには手続き当日に陸運支局で受け取れるものもあるため、事前の用意が必要なものはそう多くありません。
ここでは廃車を所有者自身で手続きするとき必要な書類を、手続きの種類ごとに紹介します。
永久抹消登録の必要書類
永久抹消登録に必要な書類は以下のとおりです。
- 所有者の印鑑証明書(発行日から3か月以内のもの)
- (代理人が手続きする場合のみ)委任状(所有者の実印による押印が必要)
- 自動車検査証明書
- ナンバープレート(前後2枚とも)
- リサイクル券の「移動報告番号」、解体後に通知された「解体報告記録がなされた日」のメモ
- 手数料納付書(手続き前に陸運支局でもらえる)
- 永久抹消登録申請書(及び解体届出書)(書類は手続き当日に陸運支局で入手可能)
- 自動車税(環境性能割・種別割)申告書(地域によっては不要)
一時抹消登録の必要書類
一時抹消登録では次の通りの書類が必要です。
- 所有者の印鑑証明書(発行日から3か月以内のもの)
- (代理人が手続きする場合のみ)委任状(所有者の実印による押印が必要)
- 自動車検査証明書
- ナンバープレート(前後2枚とも)
- 手数料納付書(手続き当日に陸運支局で入手可能)
- 一時抹消登録申請書(手続き前に陸運支局でもらえる)
- 自動車税(環境性能割・種別割)申告書(地域によっては不要)
解体届出の必要書類
最後の解体届出には、次の書類をそろえて手続きします。
- (代理人が手続きする場合のみ)委任状(所有者の実印による押印が必要)
- 一時抹消登録証明書
- リサイクル券の「移動報告番号」、解体後に通知された「解体報告記録がなされた日」のメモ
- 手数料納付書(手続き前に陸運支局でもらえる)
- 永久抹消登録申請書(及び解体届出書)(書類は手続き当日に陸運支局で入手可能)
廃車手続きの費用内訳と相場
自動車の廃車手続きには、陸運支局での手続き費用以外にもさまざまな費用がかかります。どれも聞けばかかって当然に思える費用ですが、ある程度金額がわかっていないといざ支払うときに支払えず、手続きできなくなるかもしれません。
そこでここでは、廃車手続きを含めた関連の費用の概要と相場を解説します。
運搬費用
自動車があまりに便利なため、廃車にするとき見過ごしてしまいがちなのが自動車の運搬費用です。自動車はナンバープレートを外すと公道は走れなくなるため、次のような場面では自動車の運搬費用がかかります。
- 事故で自走できない自動車を廃車にするため、業者の指定場所まで移動させる場合
- 一時抹消登録のためにナンバープレートを外し、保管場所まで自動車を移動させる場合
- 一時抹消登録した自動車を廃車にするため、業者が指定する場所まで移動させる場合
運搬費用は移動距離にもよりますが、5,000円から1万円が相場です。
解体費用
永久抹消登録や一時抹消登録後の解体届出では、自動車を事前に解体するための費用がかかります。自動車の解体が依頼できるのは許可を受けた解体工場のみ、費用は自動車の重量やサイズによって変わるため注意が必要です。解体費用の相場はおおむね2万円から3万円程度とされています。
業者によっては引き取りまで請け負う場合もありますが、なかには個人からの依頼を受け付けない場合もあります。事前に電話などで確認しましょう。
リサイクル費用
リサイクル費用は、自動車の解体に伴うゴミを処分するための費用です。金額は車種によって異なりますが、国産の普通自動車なら1万円、外国製なら2万円程度が相場とされています。
ただし、自動車リサイクル法が施行された2005年(平成17年)以降に新車登録された自動車なら、すでに購入したとき支払っているため、新たに支払うことはありません。
手続き費用
陸運支局での廃車手続きにも費用はかかります。普通自動車の廃車にかかる費用は、手続きごとに次の通りです。
手続きの種類 | 発生する費用の種類と金額 |
永久抹消登録 | 印鑑証明書発行手数料 300円(個人の場合・所有者が住民登録している市区町村で支払う) |
一時抹消登録 | 収入印紙 350円(陸運支局で支払う)印鑑証明書発行手数料 300円(個人の場合・所有者が住民登録している市区町村で支払う) |
解体届出 | 費用は発生しない |
※2023年10月現在
他の費用に比べると少額ですが、支払わなくては手続きが進みません。いざというとき慌てないよう間違いなく用意しましょう。
事故車の廃車で戻ってくる還付金
自動車は所有すれば税金を課せられますが普通自動車の場合、廃車にする時期によっては一部還付されることがあります。還付される可能性があるのは自動車税および自動車重量税の2種類です。
ここでは2種類の税金の概要と、還付金の計算方法を解説します。
自動車税
自動車税は、毎年4月1日時点の自動車の所有者に課せられる税金です。永久抹消登録や一時抹消登録は永久か一時的かの違いはありますが、どちらも自動車の登録を抹消するため、登録されていない月数分が還付されます。
月途中で登録を抹消した場合、当月分の自動車税は還付されません。還付されるのは手続きの翌月から翌3月までの月数分で、式で表すと次のようになります。
自動車税の還付金額 = 自動車税の年額 X 手続きの翌月から3月までの月数 / 12か月
たとえば2,000ccの自動車を9月3日に登録を抹消した場合、4月から9月までは登録されているとされ、10月から翌年3月までの6か月分が還付の対象です。年額が39,500円であるため、還付額は次の通りの金額とわかります。
39,500円 X 6か月 / 12か月 = 19,700円(100円未満は切り捨て)
自動車重量税
自動車重量税は新車購入時や車検時に、自動車の重量に応じて課せられる税金です。自動車重量税は新車登録からの経過年数によって金額が変わります。
- 新車登録から12年目までの年額:重量0.5トンあたり4,100円
- 13年目から17年目までの年額:重量0.5トンあたり5,700円
- 18年目以降の年額:0.5トンあたり6,300円
納めるのは、新車購入時が3年分、以降は車検ごとに2年分です。そのため廃車にしたときの車検の残り月数が還付されます。
自動車重量税の還付金額 = 自動車重量税の総額 X 手続きの翌月から車検有効期限までの月数 / 自動車重量税の対象の月数
例として次の通りの自動車を廃車にした場合の還付金額を計算してみましょう。
- 重量1.3トン(1.5トン未満)の自動車
- 車検証の有効期間の初日:2022年5月1日
- 車検証の有効期間の満了日:2024年4月30日
- すでに納付済みの自動車重量税額:24,600円(24か月分)
- 廃車手続きをした日:2023年9月3日(車検の残り月数7か月)
24,600円 X 7か月 / 24か月 = 7,175円(還付金額)
事故車を廃車にする際の注意点
事故車を廃車にするときは、手続きの他にも注意すべきことがあります。なかには満たしていないと廃車手続きができないものもあるため、事前にしっかりかくにんすることが大切です。
早めに手続きしないと税金が余分にかかる場合がある
事故車を廃車にすると、時期によっては自動車税や自動車重量税の還付金の受け取りも可能です。ただし還付金の金額は、廃車手続きをした月の翌月からの月数によって変わります。そのため手続きが遅れ、月をまたいで翌月になってしまうと月数が1か月分少なくなり、受け取れるはずの還付金が減ってしまうことには注意が必要です。
廃車の手続きは早めにすれば還付金もより多く受け取れます。やむを得ない事情があれば仕方ありませんが、廃車の手続きはできるだけ早く済ませておきたいものです。
ローンが残っている場合は残りを一括返済する必要がある
もし事故車にローンの支払いが残っていたら、所有者はディーラーやローン会社になっているため、廃車を手続きするにはまず所有権解除の手続きをしなくてはなりません。所有権解除にはローンを完済していなければならないため、残額を一括返済する必要があります。
廃車手続きを自分で行うと費用はかさむ場合がある
自身で廃車手続きをすれば費用が抑えられると考えがちですが、そうとばかりはいえません。逆に費用がかさんでしまうこともあり得ます。
たしかに一時抹消登録なら、自動車を解体することもないため手続きには印紙代と書類発行の手数料の数千円程度で済むため、業者などに代行してもらい手数料を支払うよりも費用はかかりません。
しかし永久抹消登録には、手続きにかかる数千円の他、自動車の解体費用が2万〜3万円、事故車を業者の指定場所まで移動させるための費用が5,000円以上かかります。しかし事故車や動かない自動車を専門に買い取る業者を利用すれば、より少ない費用に抑えられるかもしれません。
事故車の廃車は「廃車ひきとり110番」へ!
事故車を廃車にするにはいくつもの手順を踏む必要があります。手続きだけでなく事故車の運搬や解体にも費用がかかるため、どう処分するかはかかる手間も含めて検討することが大切です。
ただ事故車を永久抹消登録するのであれば、自身で手続きすると思った以上に費用がかかる場合もあるため、専門に取り扱う「廃車ひきとり110番」の廃車買取の検討をしてみてはいかがでしょうか。
廃車ひきとり110番なら、自動車の引き取りから面倒な書類手続き、還付金の手続きまでをすべて任せられる上、手続きの代行などの廃車費用も無料です。もちろん事前の査定も無料なので、いつでも気軽に尋ねられます。廃車は費用だけでなく手間もかかる面倒な手続きです。利用できるものはしっかり利用し、廃車もスマートに済ませましょう。